ケイケイの映画日記
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2025年04月29日(火) 「アマチュア」




とっても面白かった!CIAの分析官が主人公なので、ITが駆使されて描かれますが、思い描くような硬質の感情より、亡き妻を想う主人公チャーリーの心が溢れていて、相反するような、メランコリーな感情が沸きあがる作品です。監督はジェームズ・ホース。

CIAの優秀な分析官のチャーリー(ラミ・マレック)。愛する妻サラ(レイチェル・ブロンナハン)と二人暮らしです。ある日、ロンドンの出張中の妻は、国際テロ騒ぎに巻き込まれ死亡。復讐はわが手でと誓うチャーリーは、実行部隊のヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)の元、基礎的な知識を身に付けます。

冒頭、エリート夫婦にしたら、素朴な、しかし夫婦の細やかな愛情のこもった家と、微笑ましく仲睦まじい二人の様子を映します。チャーリーはIQ170の天才。そしてヘンダーソンから、「90歳の老婆にも腕相撲で負ける」と言われる線の細さです。しかし冒頭の夫婦の交歓を観ていた私には、チャーリーの無理筋の決意は、応援したくなるのです。

しかし、無理筋と思っていたのは、チャーリー以外の人だけ。目まぐるしく最新のIT機能を駆使するチャーリーは、敵も味方も腕っぷしは使わずに、翻弄します。実行部隊への異動は、CIAの高官の秘密を握って、揺さぶりをかけて実現したもの。敵からも味方からも追われるチャーリー。

この手のハイテク中心の展開は、私が疎いせいもありますが、だいたいが何が何だか解らず仕舞に終始しますが、この作品は置いてけ堀にならないくらいは、何となく解ります←認識は間違っている可能性もあり。一息はつけませんが、そこも良かった。一息は付けない方が、チャーリーの緊迫感が伝わって、良いってもんです。

でも一番良かったのは、チャーリーの人柄に、温厚な優しさや、滲み出る誠実さや温かさがあった事。私の偏見ですが、どうもIQが超高い人は、人を寄せ付けない孤高の人、または冷徹さが前面に出る人を、想像してしまいます。それがチャーリーは、本当に普通の人です。それがまた、彼の優秀さや怒りを、際立たせていました。

一番好きなシーンは、私の好きなカトリーナ・バルフ演じる協力者と、ただ一緒に添い寝するだけのシーンです。お互い理不尽な理由で、妻を夫を亡くした者同士。相憐れむ二人は、肌の温もりを通して、お互いの心を抱き合っていたのでしょう。

そして協力してくれる人が他にも。「死して屍拾う者なし」の諜報部員も、やっぱり人の子だよと、ホロっと来ました。「ボーン・アイデンティティー」のシリーズで、ジョアン・アレン扮するCIAエージェントが、「私は人殺しをするために、CIAに入ったのではないわ」と言う台詞を思い出しました。

ラミ・マレックは、悪役やクセの強い役より、こんな繊細な普通の人の役柄がとても良く似合う。「パピヨン」も良かったしね。チャーリーそのものの気がして、私も今作でファンになりました。

展開がとにかくスピーディーで、大掛かりな仕掛けやアクションもあり、飽きさせません。ラストに賛否あるようですが、私は全面的に支持です。人を操る事や、裏をかくのも、実はお茶の子さいさいだったはずのIQ170のチャーリー。願わくば、以前と同じく、そんな事は縁のない人生を送って欲しいです。


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