ケイケイの映画日記
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2025年07月24日(木) ストレンジ・ダーリン




いやー、面白かった。プロットもジャンルも、この手の作品は数々観て来たはずなのに、見せ方に工夫を凝らしているので、とても斬新に感じました。最後の最後まで、息が抜けませんでした。何も書けない系の作品。監督はJT・モルナー。

シリアルキラーが都市を縦断して脅かしていた頃。とある若いレディ(ウィラ・フィッツジェラルド)は、出会ったばかりの中年のハンサムな男(カイル・ガルナー)と、一夜を共にするため、モーテルに繰り出します。

シリアルキラーのお話しなので、冒頭観た瞬間、何とか逃げ出したんだなと思う訳ね。そこへ六章からなる作品だと、但し書きが出て、何故かチャプター3からです。ここから既成概念をつつく刷り込みは、もう始まっているわけ。

シャッフルするチャプターは、段々と様相を呈するまで、レディ以外、皆が皆怪しく感じる。そして後半、全容が見えてくると、はっ???と驚愕。予想を裏切る展開の続出です。あちこちかけるフェイントも良い。辻褄の合わない箇所はなく、一生懸命思い出せなくても、すぐに思い出せる場所に仕掛けているのも、脚本の技ありを感じます。

一般的な常識や思い込みだけではなく、登場人物や観客の倫理観を、試すようなプロットにも関心。例えば、「こう見えて、軽い女じゃないのよ」と言うレディが、何故行きずりの男に身を委ねるのか?途中までは、この性癖だと、同好の士を探すのも大変だな、お金使うところに行けばいいのにとか(←惨敗の感想)。ヤクはラりるためだけじゃないんだと、真相を知り感慨深かったり(実話)。女性ならではの想いが、仇になったかと思うと、それが仇にならない人もいるのよね、とラストまで観て、巧みな演出と脚本に、感心しりきでした。

もう一つ感心したのが、シリアルキラーが、どんな背景を持つのか、全く掘り下げていないのに、その哀しさが浮き彫りになる事。自分で自分を持て余し、躊躇なく人を殺す冷酷な様子とが、上手く対比になっています。
あれだけ上手く自分を演出出来れば、もっと良い人生が歩めるだろうに、それがサイコに生まれついた、哀しさなのかと思いました。

主演の二人は、全く知らなかったけど、満点の演技。華奢なウィラと屈強なガルラ―の組み合わせも、作り手の意図に叶っています。バーバラ・ハーシーが久々の出演。不思議系の元ヒッピーのお婆ちゃんで、出演。監督の友人のジョバンニ・リビシが撮影監督と、声だけの出演を務めています。
サスペンス好きなら、ニンマリしながら劇場を後に出来るはずの作品です。



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