オミズの花道
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『シングル・アゲイン』
2003年04月29日(火)


『付き合った期間の二倍の時間を男は引きずる。』
という言葉があるが、これはほぼその通りと言っていいと思う。

勿論これは女である私の経験に基づく理論だけれども。




昔、付き合っていた男が居た。

色々在って別れたのだけれど、別れて半年後に友人を介して私の携帯を調べたり、あろうことか私の勤める店を探し出してまでシフトを探ろうとしてきた。
不快感を覚えた私は友人に教えて良いと言い、向こうから電話が来るのを待った。

もう随分と時が経ってしまったから、電話の内容を詳しくは思い出せないのだが、元気にしてるかどうかが気になって、と彼は言ったように思う。
それから、店に行っても良いかと尋ねて来た。

何だか可笑しくて苦笑いしたのを覚えている。

『付き合っている最中に散々泣かせておいて、今更捨てた女の何を気にするのか。
 店に来る来ないは貴方の自由でしょう。相変わらず選択権を私に渡すのね。
 責任から逃れたいんでしょうね、そういうやり方って。』

などと、辛辣な嫌味を並べ立てたような気がする。


彼は淋しそうに受け答えをしていた。

私にすれば、別れてから半年も経って淋しそうな言葉を出されてもピンと来ない。
女性にとっては別れた瞬間から、次の道は始まっているのだし。

だが、どうやら男性という生き物はそうではないらしい。
この男だけではなく他の男も、別れ方のパターンによってはこういう行動を取りがちだった。


そのうちにふと、気が付いた。

男性という生き物は別れると相手の嫌な部分は忘れて(くれて)良い思い出が残るらしく、ある程度の時間が経つと相手の女性を懐かしくさえ思ったりするものらしい。

そしてふと、懐かしさの中から淋しさがこみ上げて来たりすると、泣かせた事も棚上げにして夜中に携帯電話を鳴らしたりするのだ。

この辺りを捉えて『男の方が未練たらしい』と俗に言われたりするのだろう。


こういう部分が女性と男性はまるっきり違う所だ。

女性は冷たいもので、別れるとかえって相手の嫌な部分を強く思い出したりする。
思い出してその部分に苛付き、受けた仕打ちを長い間忘れる事は無い。
新しい相手に、過去の相手の嫌な部分が無いか慎重に見極めようとしたりする。

この辺りが俗に『女は執念深い』と言われたりするのだろうが如何なものだろう。
自己顕示欲というものが女性は強いからか、はたまた熱が冷めると冷静だからか。



で、ここからが本題なのだけれど。
そういう経験を踏まえてからの私は非常に狡い女になった。

二人の間に何となく別れの気配が漂いだした時に、まだ相手を好きならばどんな事でも受け入れ、徹底的に泣くようにしたのだ。
気持ちが冷めてからも、どんな無茶であろうが生活の範囲なら受け入れ、尽くすようにした。

そして、別れるべき時には見事にアッサリと別れる。
勿論、泣きに泣き、いかにも名残惜しそうに、だがあくまでも潔く退く。
相手が首を傾げるほど、何も言わず黙って去って行く。

そうすると男と言う生き物は、泣かせたなら泣かせた分、尽くされたなら尽くした分、例え新しい相手が出来ようと、過去の相手である私の事を忘れなくなる生き物なのだ。
時間が経てば経つほどに、自分の年齢が重なれば重なるほどに、思い出して行く。


そしてふと、淋しくなった時にコンタクトを取って来たりする。
狡い私はその瞬間にやっと 「泣かされた時の復讐」 が叶うことも悟った。

女性は別れた男性が自分の事を今でも好きだろうが嫌いだろうが関係ないと言う人が多いが、男性は別れた女性に今現在でも嫌われている、憎まれているのが堪らなく嫌なものらしい。

ましてや自分が懐かしく思う相手に、恨まれたりしているのは相当に堪えるらしく、出来ることなら相手の女性にも自分を懐かしんで欲しいと思っている。
都合が良すぎて笑ってしまうが、そう思っている男性は本当に多いのだ。


で、復讐の方法なのだが。
勿論相手は許して欲しい気持ちがあるから、そうやってコンタクトを取って来るのだけれども、(まさに恥を忍んだ、という状態か)どんなに甘い言葉を並べられても、絶対に許さないのだ。

『許せる訳も無く、そんな義理も無いでしょう。
 別に良いじゃありませんか。
 貴方を一生嫌っている女がこの世に一人や二人居ても。
 これから先もずっと貴方を許す事はありません。
 どうか私の涙の上に立っている今の幸せ、を大事になさって下さいね。』

そんな風に告げる。
相手が酷く傷付くなど承知の上で。
こうなるともう、相手は一生私の事を忘れはしないだろう。


物凄く汚い手段だとは思う。相手の罪悪感を逆手に取るのだから。

思うが、成就を願うより、その男性の中で拭い切れない女性になる、それが相手にとっても自分にとっても、最後にして最大の復讐のように思うのだ。


そのうち私はその『男の中で忘れられない女に成る』事に、何よりも快感を見出すようになった。

恋愛が叶う事に異存は無く、また関係が続いて別の形に変化するのも良い事だとは思う。
だが何らかの背景の下、最初からそういうものを望めない恋愛ならば、また条件に何の申し分無くとも、男性が気ままに自分から離れようとしているならば、女性としてただ見苦しくなるのではなく、一矢報いる、と凛とした姿勢は必要だと思う。
相手を心から好きで受け入れても、叶わない恋がある時に、せめて、と思うのだ。



不思議なことにそれを成しえた時、やっと自分の中でその人との事が終わって行き、どんなに辛くて忘れられなかった恋愛でも、ちゃんと忘れることが出来る。

それはある意味、相手が望むように『許した』のかも知れない。
もしくは自分の中にあった最後のしこりが溶けて、自分自身を許したのかも知れない。




いずれにせよ歌にあるように、やっと本当のさよならが出来るのは確実な話だ。





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