オミズの花道
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『一年間の出会い』
2003年05月01日(木)


さて、そろそろミナミに出て来て一年が経とうとしている。

振り返って考えてみると、年甲斐も無く(ほっとけ)良くやったよなと自画自賛だ。
スナックからミニクラブ、ミニクラブからクラブへと、自分でも中々に伸し上がった方だと思う。

20代の若さがあったり、最初からお客様が付いていたりなら充分に可能だろうが、32歳の微妙な年齢で、尚且つこちらでのお客様など一切持たない私であったから、最初は不安も大きく四肢も縮こまった状態だったのである。


それに、だ。
何よりもこの不景気という不利さがあった。

確かに私は昔、北新地でそこそこ生らしていたし、それなりに売り上げも上げていた。
だから言いたいこともまかり通っていたし、自分なりの仕事の展開を自由に組めてもいた。

だけどもうあの時代とは違う。いかないい加減な事の多い水商売とは言え、いつまでもあの時代の価値観や倫理観で通るわけでは無い。
そんな事くらい普通の社会生活を営んでいれば、充分に読み取れる。

あの時代はやはり誰しもが傲慢であったのだと思う。
年齢云々ではなく、金銭の有無ではなく、独特の世風が蔓延していた。
それが解るだけに怖かった。
あの蜜の時代を知っているが故に、怖いものがあったのだ。


『誰も来てくれなかったらどうしよう』
『売り上げを上げれなかったらどうしよう』
『新規の開拓が出来なかったらどうしよう』

そんな気持ちでいっぱいだった。


だけどこの怖さの根源を探るうちに、持つからこそ怖いのだと云う事が良く解った。
しかも中途半端に頼ろうとしたから怖かったのだ。

私とて伊達に飛び石とはいえキャリアを積んでいないから、大物のお客様もいた。
(地元ぱぱとか、と〜ちゃんとか)
だけど、その人達に頼るのはひとまず一切止めようと思った。
何も持たずに最初から築いてみようと。
皆心配してくれたし、どうしてるのか、店に行ってやろうか、そんな風にも言われたが、来て頂けるなら自分の基盤が固まって、胸を張れる状態になってからにしようと決めた。


それから色々な事があった。
苦しかったし、息苦しかったし、辛かった。
それを愚痴り出したらキリが無いし、日記に書ける量では足りないだろう。


だけど最近、しみじみ思う。
苦しくて良かったし、息苦しくて為になったし、辛くて幸せだったと。

今、何がしかの形で古いお客様に関わって戴き、それなりに新規も回せる。
そんな私はとても幸せなのだ。少しだけ伸びれたのだ。


そして、思った。
この不景気は逆に有り難いものなのだと。


何故ならば、この時代に 『飲めている』 お客様、
御自分の懐にも木枯らしが吹きすさぶと言うのに、会いに来てくれるお客様、
御身体を壊されてもうお酒が飲めないというのに、顔を出してくれるお客様、
目的が色であれ、美であれ、お笑いであれ、何であろうが、

その方達こそ本物のお客様だからだ。
私が見つけた大切な宝物だからだ。



私は常々接客業として、ホステスがお客様に有り難いと思うのは当たり前だと思っている。
ゼニカネが絡む以上、ビジネスとして感謝するのは義務であるとさえ思ってはばからない。

・・・・だけど、この仕事で本当にしなければいけないことは、自分自身が胸を張って、自分のお客様を誇りに思うことだと思う。

それが無ければ、この仕事はとんでもなくつまらないし、値打ちも無い。
だって自分の宝物を誇れないほど、この世につまらぬ事は無いんだから。


一年が経って、今私が一番自分に頑張ったねと思うのは、誇りに思うのは、小娘だったあの頃よりもずっとずっと良いお客様が、至らない私の傍に居てくれている事だ。

中には転勤で滅多に会えない方もおられる。
不謹慎だし、辛くて書けなかったが、亡くなったお客様もおられる。
新幹線に乗って会いに来て下さる方もおられる。
自宅まで迎えに来て下さる方もおられる。
昔からずっと可愛がって下さる方もおられる。
背中を押して下さるお客様もおられる。
発破をかけて下さるお客様もおられる。

皆様が私の大切な宝物。


慢心しそうになる時に、常に思い浮かべる。
宝物である、彼等の事を。

辛い時も、お店に行きたくない時も、悲しい時も。


そして何より・・・・嬉しいことがあったとき、思い浮かべる。
喜びを分かち合う相手が居る事は、辛い時に慰めあう相手が居るよりも、
ずっとずっと幸せな事なんじゃないかなと思う。


ここを借りて、そっと御礼を言いたい。
私の大切な宝物様達、一年間本当に有難う。

不束不届き者ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします。



水上拝





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