 |
∧
永遠なる色彩の幻想 - 2002年04月23日(火)
�� 純白の花弁が 降りしきる中 幾人かに担がれて 棺が運ばれていく 純白の衣に身を包んだ人々の真中を 純白の花弁をまき散らす人々の真中を 荘厳に華やかに 棺が運ばれていく 棺の前には 赤い絨毯の道程 棺の後には 白い花弁の道程 部屋の中央 神の御前に据えられた棺に 神父は 愛の誓いの言葉を問い 人々は 祝福の言葉を投げかけ ステンドグラスから零れ落ちる光の中で 棺は 永遠を約束された
�� 真紅の花弁が降りしきる中 暖められた部屋の中に 物言わぬ影 血の通わぬその躯を覆う皮膚は 心の通わぬその瞳を覆う睫毛は さりとて人の形をしたその影を美しく象る 部屋の外は 凍えんばかりの冷気と花弁 部屋の内は ほのかな暖かさの孤独と沈黙 物言わぬ影は その与えられた美貌が故に 暖かい沈黙から抜け出る事すら 叶わずに 冷たい花弁すら触れる事さえ 叶わずに 心通わぬ碧い瞳から 真紅の涙を一粒こぼし 影は 永遠を束縛された
�� 紺碧の花弁が降りしきる中 噴水のある中庭は 静寂に包まれて 咲き乱れた蒼い薔薇を踏みしめながら 様々な羨望と嫉妬と崇拝を踏みしめながら 孤独な帝王は独り 噴水に向かう 中庭には 蒼い花弁と水飛沫が降りそそぎ 城門には 民の悲鳴と血飛沫が降りそそぎ 中庭の中央 噴水の傍に佇む帝王は 遠くに城門が破られる報せを聞き届け 次第に中庭に近づく民の声と足音を聞き届け 自分の胸を破る手応えと共に生まれる安息の闇の中で 帝王は 永遠に解放された
�� 漆黒の花弁が降りしきる中 漆黒のドレスに身を包んでいるのは 清らかな乙女 乙女の暮らす家は 小さく貧しくみすぼらしく 乙女の暮らす家は 暖かそうな橙の灯を毎夜湛え 幾人もの男達が 清らかな乙女とその暖かさを夢に見る 貧しく質素なるが故に 乙女は益々清らかで 漆黒のドレスに身を包んでいるが故に 乙女は益々清らかで 清らかな乙女は 清らかなるが故に神に愛され 清らかな体を貶める事なく 神と交わり 清らかな体を貶める事なく 神の子を孕み 清らかな体を貶める事なく 神の子を産み落としたが 乙女は 永遠に汚された
�� 橙の花弁が降りしきる中 たわわに実った果実の溢れる果樹園で 左の手では 愛しき妻の体を抱きしめ 右の手では たわわに実った果実を愛で 紫紺の髪を風に遊ばせながら 彼は果樹園に暮らす 誰も惑わさねば その幸福は終わる事なく 誰も惑わさねば その無知は終わる事なく だがしかし 夢には終わりが来るもので 彼は自分の妻を 深く深く愛していたが故に 彼は自分自身を 深く深く愛していたが故に 食べる事の許されぬ果実に手を伸ばし 彼は 永遠に追放された
�� 花弁が回る 鮮やかな無彩色をまとわりつかせ 色彩が巡る 無色の静寂の中で
�� 紫紺の花弁が降りしきる中 薄暗い店の中で 連れが来るのを待ち続ける 紫紺の液体を 小さなグラスで口に運び 紫紺の液体を 何度も何度も口に運び 待てど暮らせど 連れは来る事もなく 分かっていながら 小さなグラスを口に運び 分かっていながら 何度も何度も口に運び 店から人影は少しずつ減り続けているが 口に運んでいる液体を 紫紺から琥珀に変え 口に運んでいる液体を やがて口に運ぶ事をやめ 他の人影と同じように席を立ち 扉を後ろ手で閉じた時 店は 永遠に閉ざされた
�� 琥珀の花弁が降りしきる中 豪奢な部屋に 着飾った少女が佇む 彼女は 鮮やかな黄金飾りと刺繍の服を身につけ 彼女は 骨を砕かれ布を巻かれた足で小さな小さな靴を履き それに何の疑問も感じずに微笑む 彼女は さながら黄金の模様を持つ胡蝶のようで 彼女は さながら風習に囚われた胡蝶のようで 秘められた悲しみの中に息づく耽美 囚われているが故に 彼女は優美であり 足を砕かれているが故に 彼女は優雅であり 醜いが故に美しさは輝きを増し 彼女は 永遠の夢を見る
�� 金色の花弁が降りしきる中 共に舞い落ちるのは 神の御使いの羽根 降りしきる羽根は 万物の上に降りそそぎ 降りしきる羽根は 原罪の様に降りそそぎ 世界は金色の光で満たされる ハレルヤ 世界よ 鳴り響く鐘と喇叭の音に耳を傾けよ ハレルヤ 世界よ 初めにして終わりなる者を荘厳なる歌で讃えよ 全ては 全知全能なる父と子と聖霊の為に 我らは 罪で満たされている穢れた肉体を持つが故に 我らは 神への愛と畏敬と恐怖からなる神妙な気持ちに溢れ 金色の羽根と花弁と神の愛が降りそそぐ中で 世界は 永遠の楽園に到達する
金色の光に溢るる楽園
...
∨
|
 |
INDEX
past will
|