みんなの輪からそっと離れる。「これからどうする?」「うん、ちょっとだけ」冷たい風がふく夜のオフィス街。「なかなか時間とれなくて、ごめんね」タクシーをつかまえる、彼。窓を流れていく景色はなんだかちょっと悲しげでわたしは思わず黙り込む。まっすぐすぎる視線に顔を上げられない。今は、わたしだけのもの。お願いだから、ほかの人の話はしないで。家に帰ったわたしの髪にはほんのり残る煙草の匂い。