あの人はわたしのことを「あなた」と呼ぶ。 おだやかな物腰と自然と出るやさしい話し方からは あの人の育ちのよさが感じられる。
「よかった、遠くじゃなくて」
素直な気持ちだった。 あんなに普通に言えたのは、お酒の力もあったかも。 前を向いたまま、あの人の横顔さえ見れない。 普通の人にとってはなんでもないひとことなのかもしれないけれど。
「わたしどうやって帰ろう?」 「そんなの知らないよ」
そう言いながらも、ちゃんと確認してくれていたあの人。
「ちゃんとあなたのことはわかってるって」 その言葉がどれだけわたしを感動させたか、 あなたはきっと知らないでしょ?
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