思いがけず聞いた名前に動揺を隠せなかった。その瞬間から会話に集中できない自分がいた。「すぐ戻るよ」メールを表示した携帯を祈るように握りしめて何食わぬ顔をして待つ、わたし。ひさびさに感じる君のまなざしは昔のままでちょっと見上げる角度から降る声がとても心地よくてできることならばこのままどこかへ消えてしまいたかった。ふと手をのばしてからめた腕を振り切らずにいてくれたことがうれしかった。その後送ったメールに返事はなかった。「いま、彼女は?」聞きたかったことも聞けないままだ。