ぼんのう
DiaryINDEXpastwill


2001年09月01日(土) あゆでうぐぅ!

このタイトル、絶対何人かは誤解したかもしれない。
そんなのではない。
今日、親父の定年退職(+リューマチ悪化&痴呆進行)を記念して、我輩が
いつもお笑いで使っている埼玉県寄居町で鮎料理をご馳走したというものである。

実は我輩、大の鮎好きであったりする。
骨を取り除いてどーのこーのではなく、
頭からガブっと行くのが大変好きで、これに辛口の吟醸純米酒があった日には、
台湾並みのパライソにトリップするというものである。

お笑いのネタに事欠かない寄居町ではあるが、鮎料理で有名な割烹「京亭」を
予約して入る。
ひなびた雰囲気があり、なかなかよろしい。
昼なのに薄暗く、荒川から上がってくる涼風と、洒落た庭・・・
そして鮎料理三昧。
うーん!絶品!

ここはかつて、歴史小説家の池波正太郎先生がよく遊びにきたところで、
併設している旅館に泊まりながら、鮎料理を堪能していたという。
意外かもしれないが、先生は元来洋食派で、若い頃銀座の洋食屋の
常連であったという。
しかし根がグルメ・・・和洋中問わずに全ての味を愛していた先生、
この「京亭」で面白い逸話が残されていた。

そもそも旅館割烹「京亭」はごく普通の京風割烹の料理を給していた。
当時、見下ろした所にあった荒川では、鮎がたくさん泳いでいたという。
池波先生は、先代の主に

 「おいしい鮎が食べられる、そんな店にしたら如何だろう?」

・・・この一言が、寄居町に鮎料理「京亭」を誕生させたのである。


それにしても、奇をてらうことのない正統派の鮎料理・・・絶品であった。
鮎の塩焼き、鮎の水煮、鮎の刺身、鮎飯、少し変わった石焼もなかなか〜。

我々以外に客がいるはずなのに、不思議なことだが声などが聞こえてこない。
女将曰く、
 「どんなにお客様がいらっしゃっても、ふすま一枚挟んでお通しする
  ことは致しません。」

・・・サービスの根本を垣間見た瞬間であった。


食後、池波先生が小説を書いていた部屋にこっそり入る。
やや狭い感じはするものの、濡れ縁から外に向けての庭は実に美しい。
東京等の料亭では、無理やり箱庭に塗り固められた山や池等が配置されている。
しかしここは違っていた。
手前の池の面に写るのは、遠く奥秩父の連山・・・無理に作った箱庭ではなく、
「京亭」の庭と外の自然がひとつになっていたのである。

濡れ縁に寝そべる。
ふと何処からともなく、料理に使う石焼の音がする。
庭の奥からそよ風、すれる森の葉、そして荒川のせせらぎ。
酔いもほどよく、まどろむ意識の中、珍しい事に一句浮かぶ


  石焼きに
   香る音の葉
  秋の川

      ---愚離庵 (我輩の号)


ANDY 山本 |HomePage

My追加