今日のネットニュースで、ショッキングな記事を読んだ。うつ症状のある母親ほど、子どもを虐待する割合が高いというのだ。 事実自体は、冷静に考えれば、それほどショッキングではないかもしれない。けれど、実際にうつ症状を持ち、子育てに悩んでいる母親にとっては、死刑宣告にも等しいほどの衝撃を与えるものだったのではないだろうかと、心配になった。 私にも、うつ病を持っている知人がいる。古くからの創作仲間で、感受性が強く、人一倍気を遣い、神経が細やかな人だ。彼女を通じてわかったのは、うつ病が誰でもかかる可能性のある「心の風邪」と呼ばれるものであること、そして周囲の無理解や無神経な言葉・態度が、それを引き起こし、悪化させるものであること。 今回の報道について言えば、結局、うつ病の母親が子どもに攻撃的になるということの背景には、そもそも母親が鬱状態になってしまっているという、環境自体に原因があるということなんだろう。だとすれば、母親がなぜうつ状態になるまでに追いつめられているのか、そのことこそが問題なのではないか。そこまで言わないと、冒頭に触れたニュースも、社会的な意味を持たないのではないか。ただ単に調査の結果を伝えただけでは、うつ症状を持つ母親やうつ病それ自体への偏見や差別を生み出すことにもなりかねないし、もっと深刻なのは、うつ病を持つ人々が自分自身を虐待予備軍だと思いこみ、自分で自分を追いつめる可能性もあることだ。今回の報道は、そこまで考えてなされただろうか。 報道は事実を伝えることが務めだけれど、一部の事実だけを伝えることによって、かえって問題の本質を見失わせてしまうこともある。もちろん、マスメディア側もそれは充分承知していて、そういう配慮のもとに、感心するほどのフォローをしてくれるときもあるのだけれど。 浅草女子短大生殺人事件の犯人が知的障害者であったことを、そしてそれを伏せていた報道機関があったことを、何となく思い出した。
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