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幻のデジカメ - 2001年09月14日(金) 夕餉の食卓、ふと窓際の棚に目をやると、カメラの箱がある。 どうみても新品のようだ。 私:「カメラ買ったの?」 父:「う〜」 父は日本語が苦手である。(いかなる言語も苦手なのだろうが) 私:「何で?」 確か、実家にはカメラはいくつもある。 私:「普通のカメラなんでしょ?」 父:「デジカメだっ!」 ・・・・・・・ 「あ〜」と「う〜」を解読できる母の通訳によると、知人のPENTAXのOBに薦められるまま、デジカメを買ってきたということが判明した。 ふむ。パソコンに触る気もない父が、義理で買ってきたデジカメだから、びー子か私に使わせるつもりなのか? それにしても、前代未聞の気前の良さだ。怪しい、怪しすぎる。 が、しかし、最新機種だというデジカメの魅力には逆らえない。 食後に念入りに手を洗い、パリパリとカメラの梱包を開いた。 PENTAX Optio 330 コンパクト3倍ズーム 334万画素 CCD搭載 をを! 念願のマニュアルモードも、動画もある! 私はいそいそと梱包内容をチェックし、リチウム電池を充電器にセットした。 私:「まず、充電しないと使えないんだよ〜♪」 父:「あ〜」 私:「記憶媒体はコンパクトフラッシュか・・・あれ? 同梱されてないよ」 父:「う〜」 私:「な〜んだ別売りかぁ、ケチだね〜PENTAX。明日買ってこなくちゃ写せないや、残念、残念」 と、そのとき、カメラ本体を今にも壊しそうな勢いでいじくりまわしていた父が言った。 父:「おい、フィルム・・・みたいのはどこに入れるんだ?」 私:「へ?」 父:「だいたい、おまえたちに使わせるんじゃないんだ! 俺が使うんだ〜っ!」 一瞬フリーズしかかったが、私は笑顔で退場した(こめかみは多少痙攣していた)。 ・・・やっぱり。 父のデジタルに対する認識を甘く見て、とんだぬか喜びをしてしまった。 おNEWなデジカメは幻だったのだ。 デジタルカメラ=フィルム(みたいなもの)を入れて写す新型のカメラ 現時点で、そう思ってフィルムの挿入口を探している父が、近い将来デジタルカメラの仕組みを理解して使いこなせるようになる確率はほぼ0%である。 なぜなら、父は家電製品の取扱説明書を自力で読めたためしがないし、私の説明は意地でも聞かないからだ。 これまでに父の犠牲になってきた、数々の電器製品や機械工具の姿が、走馬灯のように目蓋に浮かび、胸が痛む。 残る希望はただひとつ。 こうなったら祈るしかない。 どうか、壊してしまう前に飽きてくれますように・・・ ...
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