2006年04月14日(金) 没になった話とか
 

お鍋の中には煮込み途中のシチューがコトコト音をたてている。
わたしはその横で、ハンバーグをじゅうじゅう焼く。
お皿には、マッシュポテトと茹でたブロッコリー。
時計を見ると、もうすぐ彼が帰ってくる時間だった。

わたしと彼が付き合い始めてもうすぐ4年目。
一緒に暮らして、今日がちょうど1年。
柄にもなく、同棲1周年パーティーなんて、企画してみたりして。

ハンバーグを焼きながら、この一年を思い出してみたりする。
よく友達に、仲がいいねぇ。とか愛し合ってるねぇ。とか
いわれるのだけど、実際のところそうでもない。

彼の嫌いなところは、この1年で山のように見つけた。
たとえば、冷蔵庫をほんの少し空けたままにするとこなんてありえないし
たまに朝歯を磨き忘れていることとか、げんなりする。
びしょぬれで、お風呂上りに部屋をうろうろ歩くのも
いくら言ってもやめないし。

わたしが彼に対してたくさんの不満があるのと同じように
彼もわたしに対してあるだろう。
(しょっちゅうぶつくさ言っている)

けどそれでも二人でいる理由は、なんだろう。
それすら許してしまう何かがあるんだろう。

たとえば、彼のそばに漂う空気が好き。
一緒に本を読むだけでなんとなく落ち着く空間が好き。
お腹を抱えて笑うことのできる自然さが好き。
なにより、彼と一緒にいるときの、自分自身が好きだったりする。

あともうちょっとで料理が出来上がるって時に、彼は帰ってきた。
玄関に丸めた靴下を放り投げる。

「それ、やめてってば!」

怒るわたしの声を聞きもしないで
台所に入って輝くような目で彼は料理を見つけた。

「うわー、すげーご馳走!」


喧嘩しては、仲直りをして。
抱きしめあって、罵り合って、傷ついて。
泣いて、笑って、寄り添うように眠って。
君と一緒なら、どんな悲しい夜だって明けるだろう。
君と一緒なら、いつだって新しい朝が生まれるだろう。

「美味そう!美味そう!」

あまりにも嬉しそうに彼が笑うから
わたしは怒っているのも忘れて、微笑んでしまうのだ。





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