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 乗換駅で朝の満員電車から開放された私は、時間を確かめようと歩きながら鞄を探り、ストラップをつかんで携帯電話を引っ張り出した。
 やけに軽い感触。見れば、鞄から引きずり出されたストラップの先で無残に揺れているのは、携帯電話の裏面カバーの上部三分の一と、本体から離れてみるとやけに長く見えるアンテナだけであった。
 人ごみに流されて歩き続けながらも慌てて鞄を探る。手に馴染みのある感覚に安堵しながら取り出した携帯電話は、可哀想に基盤剥き出しのあられもない姿である。
 恐る恐るアンテナを本体の隅にある穴に押し込み、触るたびにギザギザになっている端から塗料とプラスチックが落ちる割れたカバーをはめる。
 圏外と表示されていたところが、アンテナのマークに変わるのを見て、ためしにメールを打ち、恐る恐る送信してみると、「お届けしました」の表示。
 基盤は無事だったらしい。
 しかし……私は溜息と共に手の中の携帯電話を見る。
 とてもこのまま使っていけるような様子ではない。カバーはかろうじてはまっているが、本体との間に隙間が開いているし、割れた部分が尖っていて手に痛い。
 折畳式でないところが気に入っていて長いこと使っていたものだが、これはもう買い換えるしかないだろう。
 一日や二日このままでいても差し支えないが、週末にある友人の結婚式までにはきちんとしたものを持っていたいとなれば、今日しか機会はない。
 仕事が忙しくなかったら、早退して買いに行こう。
 そう決心して私は足を速めた。

まあなんというか、実話です。
これはあんまりじゃないでしょうか。

  • 深夜の初会 (内田 百�痢,舛�ま文庫)

2004年06月16日(水)



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