朝の電車内。少し早く出社したご褒美が。 となりのひと、推定178cm。眼鏡装備。 ……ああ。自分と手塚が並んだらこんな感じか。 自分惑星に旅立った女子がココに……。
…………かつて、若干14歳にして単身ドイツへと渡り プロテニス界 最年少の若さでトップランキング入りを果たした 碧光のテニスプレイヤー手塚国光。 欧州のみに留まらず、世界各地で順当にランキング順位を伸ばしてゆく 彼の未来に、世界中の誰もが疑いなく期待をし、己の夢をかけていた。 すべてが順調に、途切れることのない未来へのレールを 歩んでいるかのように思われていた 彼の身に何が起こったのか。 19の誕生日を間近に控えたある夏の日、彼は突然の引退宣言をした。 その時、彼の胸に去来していた想いは何だったのか。 彼の秘めた闘志の原動力はいったい何だったのか。 引退の真の理由は何だったのか。
忽然と姿を消した彼のその後を知るものは、 現在、少なくとも今のテニス界には 誰もいない…………
少なくとも。 今ここで吊革に掛けた左手に額を預けて 微かにまどろみ始めている人物が かつての「手塚国光」だと気付く者は、 この車中にはいないだろう。
「……起きて…もうすぐ駅だよ……」
いつまで続くんだオイ。 都合のイイ時だけドイツにするな(笑) ここにへんな女子が。車掌さ〜ん!
すいません。
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