TV徒然...メッセンジャー

 

 

古尾谷雅人さんの訃報 - 2003年03月26日(水)

彼が逝ってしまった。あまりにも突然に。


朝、いつものようにTVをつけると飛び込んできた
『古尾谷雅人、死去』の文字。
「エッ、何で???」思わず声に出してた。
「最近病気してたっけ?なんか事故にでもあった?まさか自殺なんてことは・・・」
詳しいことが知りたくて新聞を見ると『自殺』。
もう言葉が出なかった。

彼を知ったのは小学生のときだった。
母や祖父の影響で推理小説に興味を持ち出した頃。
『鵺の鳴く夜は恐ろしい・・・』で知られる『悪霊島』。
映画館のそばの電柱に張られていたポスターの恐ろしさったら。
「怖い、でも観てみたい、でも・・・」
子供心に気になって仕方がなかった。
当然というかそのときは観られるわけもなく
TV放送されたときに観た。
恐ろしいシーンは隠した指の隙間から。
覚えているのは洞窟のシーン。
長身の彼が身体を小さくしながら進んでいく。
初めてあこがれた大人の人だった。

『悪霊島』だったかどうかは定かではないけれど
彼が名家のお嬢さんを力づくでモノにした。
でもそれは欲望からだけではなく
深い愛情に裏打ちされた行為だったことがわかる。
当時思春期を迎えていた私にとって
とても衝撃的なシーンだった。
現在のように性についての情報もそう多くなくて
「力づくで襲う」ということがひどく怖かった。
けれど、後に彼の深い愛情を知り、すごく素敵・・・なんて思った。
(子供だった・・・今思うと恥ずかしい)
馬鹿みたいだが、彼になら襲われてもいいと。
(その意味は全くわかっていなかったのだけれど・・・)

高校時代、友人がアイドルにいれあげる中、
理想のタイプは『古尾谷雅人』と公言し
『誰それ?』と引かれたこともある。
別にシブ好みぶっていたわけでも、アイドルが嫌いだったわけでもない。
ちゃんと好きなアイドルもいたんだけれど、理想といえば彼だった。

こんな日がくること、なんとなくわかっていたような気がしている。

故松田優作氏の葬儀のとき、棺を運ぶ彼。
深い悲しみをたたえた瞳を今も忘れない。
尊敬していた人の早すぎる死。
目標を奪われたかのような脱力感を彼の姿から感じた。
大きな身体が小さく、とても小さく細く見えた。
そのとき、そう遠くない未来に彼も逝ってしまうんじゃないかって思った。
彼の風貌が優作さんに似ていたせいかもしれない。
何気なくそう思った。思わなければよかった。
本当になってしまうんなら。

真面目だとか純粋だとか評されていたけれど
大きな身体をもてあましている感じが切なかった。
ここ何年かはTVでよく姿を観ていて、以前ほどミーハーな感じではなく
「がんばってるんだなぁ」と思っていたのに。

ワイドショーも観た。普段なら観ないけど、理由が知りたかった。
みんないろいろ言ってるけど、彼は今どう思っているのかな。
誰にも、何も言わずに逝ったこと。
プライベートすぎる内容だから遺書があったと公表できないという人もいたけど、
本当の事はわからない。
理由がわかっても、もう彼の姿は見ることが出来ないんだよね。
悲しい。でもなんだか泣けない。
すごくすごく悲しいのに。胸が詰まる。涙腺も一緒に詰まっちゃったのかな。
いろんな想いが頭の中を駆け巡ってる。
せめて今、彼が心安らかでありますように。

今日は横溝正史の『人面瘡』のコメントをしようと思ってた。
でもやめます。今日はそんな気分になれない。
彼を知ったのと同じ横溝作品の放送翌日にこんな訃報が入ってくるなんて。

ご家族の皆さん、関係者の皆さんの気持ちを考えると辛いです。
ご冥福をお祈りいたします。
でも、本当は、帰ってきてほしい。
自分の手で自分の人生を終わらせるなんてしてほしくなかった。
ひとつ、大切なものをなくしてしまった気がします。



...




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