つれづれ
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2001年08月26日(日) 「ハシラサボテンの見る夢は」9 その1

純平は春休み中にも関わらず、久しぶりに制服に身を包んで通学路を急いでいた。
途中、日比野花店を横目に見ながら。
今朝、学校に行くからバイトには遅れるという旨を伝えるため、日比野花店に電話を入れたところ、珍しく拓人が電話口に出た。
それは本当に珍しい事で、純平は言葉につまってしばし無言のままだった。すると、
『なんだよ。なにか急用じゃないのか』
拓人の一声。
『驚いた。よく俺だって、分かったな。拓人が出るとは思わなかったから・・別にコレいたずらの無言電話じゃないからな?』
純平の呼びかけに、拓人は無言で答えた。とうより、空気が凍りついたと言うべきか?そのくらい、電話口からは、拓人の気配は感じられなかった。
『拓人?あのさ、今日、担任に呼び出し食らって学校に行くことになったんだ。だから俺、バイトには遅れ・・』
純平の会話は拓人の声で遮られる。
『いいよ。来なくて』
『はぁ?』
『学校に行くんだろ?無理して来なくたっていいさ』
どこか突き放すような話し方が、帰って気になる。
『なんだよ。どうかしたのか拓人?俺、別に無理なんて・・』
『用件は伝えておくから』
『あ!おいっ、拓人!?』
一方的に切られた電話回線からは、むなしい音が響いていた。


「くそー、なんだよ。拓人のヤツ・・・・。気になって全っ然、学校なんて行く気分じゃねー。なんであんなに機嫌悪いんだ?」
純平は日比野花店の店前で、一旦自転車を止めて中の様子を伺ったが、開店前の店には一向に人の気配すらしない。
学校での用件をさっさと済ませて、出直す方が得策と思われた。
純平は、しかたなく後ろ髪を引かれる思いを断ち切って、自転車を全速力でこいだ。


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睦月 |テガミ

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