想
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午前4時半。 ここは、日本の、とある地方の、とあるアパート。
新聞配達がちょうど20分前にやってきた。 朝早くからご苦労なことだ、と感心する。 だが、毎朝毎朝ノー・リアクションな新聞受けが相手では 単調な仕事になり過ぎるかもしれない。 たまには気分転換もいいだろう、と、 突っ込まれた矢先に新聞を内側から引き抜いてみた。 自分が配達夫だったら、こんな家には明日から新聞届けるの嫌になるかもなぁ。
10分ほど前から、外でムクドリが啼きっぱなしだ。 面倒なので立ち上がることはしないが、 いま窓から空を見上げれば、空一面が黒くなっているはずだ。鳥で。 この時期、この地域一帯は、ムクドリの大群の通り道になるらしい。 数えたことはないが、何万羽もいるのだろう。 とにかく、半端でない啼き声と、 これも冗談でなく、半端でない「ムクドリ臭」に包まれる。臭い。鳥臭い。
アルフレッド・ヒッチコックの映画を思い出す。 確か、『鳥』というタイトルの。 その映画をテレビで観たのはまだ幼い頃だったので、 ストーリーは記憶の中で曖昧になってしまったが、 恐ろしい印象は残っている。押し寄せる鳥、鳥、鳥。
数日後の出発のための準備が、まだ終わらない。 そろそろ面倒になってきた。 せめて、天気が良くなればいい。
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