想
目次|過去|未来
色の濃いアイスコーヒーにコーヒー用のミルクを入れて、足のついたグラスの底にミルクが沈んでゆく様子をただじっと見つめている。ミルクはコーヒーに少しも混じらずに、きれいに歪んだ真っ白な線を描いてただただ静かに下がってゆき、たまってゆく。 動いているものをながめるのは好きだ。何かが変わってゆく様子を観察するのは、それが変わっているという事実だけでも不思議と楽しい。そして、不思議だ。流れてゆく空の雲、木々の緑、風の色。寄せては返す波と水音。着々と完成に近づく建設中の高層ビルも。明滅を繰り返すだけの切なく赤い信号も。 ただぼんやりとながめるのも、目を逸らせないほど真剣に見つめるのも、それに見合った楽しさがある。考え事をしながらでもいい。無心になれるならもっといい。
変わってゆくものを見るのはたいてい楽しい。変わってゆくきみを見ているのは、少し、辛いけれど。変わってゆく自分を見ているのは、少し、悲しいけれど。それでも僕らは変わってゆく。僕は今日も見つめ続ける。
少しでも、優しく変わってゆけることを、心のどこかで願いながら。
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