無題ドキュメント
初めて、運転免許証を手にしたとき、それに写っている自分が
誇らしげであり、また嬉しそうだった。自分で自分の顔を、あれだけ
見たのは初めてだったかもしれない。
それから、私は免許を2回更新して、顔写真は変わった。
そこに写っている顔は、既に表情を失っていた。
車を運転する事が楽しくて楽しくて、運転する車があれば昼夜を問わず運転した。
ただ、免許取立ての頃は、運転する車が無く、時々レンタカーを借りては、
ほぼ24時間、運転に興じていた。
それから時が経ち、私は車を所有した。いつでも運転が出来る。
その気になれば、24時間と言わず、1週間でも、1ヶ月でも運転する事だって出来る。
もちろん、体力と相談する必要があるが、「目の前に自分の車がある」事は、
私が物心ついたときからの夢だった。
しかし、私は今、運転をしていない。それどころか、車を負担に感じるようになった。
経済的な負担はもちろんあるが、そうではない。
車があることが、鬱陶しいと感じる事が多くなった。
夢は叶えてしまうと、喪失感を抱いてしまうものらしい。
あれだけワクワク出来たものに対して、鬱陶しいと感じるとは、
全く予知していなかった。
私が再び、喜びに満ちた自分に出会える出来事は今のところ、無い。
次に免許を更新するときは、もう一度、自分の写真を眺めて喜べるような
出来事と出会いたい。