日々日記
いちらん…ふるい…あたらしい
秋になると死んだ母方のじいちゃんをよく思い出す。
じいちゃんちは中山道妻籠宿の土産物屋だったので、遊びに行くと お昼はいつも宿場の食堂に大皿を持って行って、山のように五平餅を買って来たものだ。
夏はだいたいそうめんメインなんだけど、秋冬は五平餅メインの昼食だった。 鼻が匂いをまだ覚えてる。香ばしいんだ。
そんで時々、大きな水車のそばにあるお店に連れて行ってもらって、ザルそばと馬刺を食べた。 じいちゃんは馬刺で熱燗を飲んでご機嫌だった。
初めてそこへ行ったとき、「じいちゃんこれ何?」って聞いたら、 「馬刺」って言われて「?」ってなった。
「ばさしって何?」 「馬の肉だよ。お前馬刺知らないのか。ハッハッハ。愉快愉快!ほれ食べてみろ。」
戦慄が走ったね。何が愉快かと。
だってさ、それまで馬は食べ物だとは思ってなかったから。
しかしながらわたしは馬を食べるということにほんのちょっと興奮を覚えた。 なんだか禁断の食べ物を口にしている気がしてワクワクしたのもホント。
でも実際食べたらおいしかったから、そんなおののきはすぐ無くなった。 むしろ、馬刺をおかわりしてさらに愉快がられた。
あー、懐かしいな〜。
ちなみに、「愉快愉快」はじいちゃんがご機嫌な時の口癖。
そんなじいちゃんも、ばあちゃんを先に亡くし、 惚けてからずっと面倒を見てくれていた、たった一人の息子を自殺で亡くし、 生家とは別の場所(母の姉の家)に引き取られ、そこで老衰で亡くなった。
生きていると、一生懸命だろうが、正しかろうが、どのみち何かが降り掛かる。 運命ってのは残酷だとよく思った。
じいちゃんがおばの家に行ってからはよく会いに行った。 私をよく母と間違えたけど、たまにシナプスが繋がると思い出してくれた。
逆さまに持った新聞を毎日一生懸命読んで、話しかけるとにこにこ笑ってた。
じいちゃんが亡くなったとき、火葬も葬式もおばのところでやったから、 せめてじいちゃんの生家の近くの野の花を、と思い、田んぼの畦で花を摘んで行った。
そしたらおばちゃんがそれを棺に入れてくれたっけなぁ。
…こんど帰省したら、 墓参りして、そんで五平餅とか馬刺食べに行ってこよう。
inu-chan
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