一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
目 次|過 去|未 来
里子ちゃんのお父さんが・・・、
「さとこ・・・悪いねー、お父さんが怪我さえせんかったら、高校ぐらい行かせてやれたのにね、さとこ一人に頼ってしまって・・・」
その時の里子ちゃんが言った言葉が忘れられなくて、
「爺ちゃん?さとこがいなくなったら淋しいか?我慢してな、爺ちゃんを病院に連れていきたいとよ・・・お父さん?さとこがおらんと淋しいか?我慢してな、お父さんの足、治しちゃるから・・・お母さん?さとこがいない間、体、壊さんようにがんばってな、お金いっぱい送るから・・・弟や妹には高校、行かせてやりたいから。」
あの時みんな泣いた・・・爺ちゃんもお父さんも、お母さんもみんな泣いてたのを思い出します。お母さんが声を殺して泣いてたのを、今思えばあの時、一番、淋しかったのはお母さんだったんでしょね、しばらくして、お父さんが自分に言い聞かせるように喋りはじめたんです、
「さとこは行かんでもいい!その代わりこの家を売って町へ出る!」
またこの次
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