QP-Days
くづき



 『リチャード三世』

今年の観劇納めは日生劇場の『リチャード三世』でした。初演版を見逃したのでかな
り楽しみにして劇場へ。午前中は帝劇でのチケット戦に参加していたのでちょっと寝
不足ぎみ・・・なので、睡魔様が降臨しないように気をつけないといけません(^^;。
 オープニングは舞台に走り込んできた白馬が倒れ、天から犬の死体や薔薇の花、あり
とあらゆるものがドサドサと落ちてきてビクッ!宇崎竜童の激しい曲が大音量で流れる
中で真っ赤なマントを風になびかせて逆光に佇む市村リチャード。
 キャー!!!カッコ良すぎです 8(><)8
 この1シーンで魂持っていかれたーッ!
 
 天使の声と悪魔の詭弁で人々の心を操る悪王リチャード。市村さんのリチャードは
「悪漢」といっても愛嬌があり、醜い姿をしていても人を惹き付ける力を持っていま
した。敵の未亡人アン(香寿たつき)を甘い蜜の言葉で陥落させ、兄弟たちや重臣を
油断させて陥れ、ついには玉座へ。
 一番の見せ場は前王妃エリザベス(夏木マリ)との対決。全てを奪ったリチャード
へ呪の言葉をぶつけるエリザベス、彼女の心のほんのわずかの隙間をついて彼女の
「絶望」を「希望」へ摺り替えていくリチャード。言葉のやりとりだけなのに、正に
真剣勝負!
 張り詰めた緊張感、お互いの一言一言が相手の身を切り、心の血を流す。
 2人の魂をかけた対決にゾクゾクさせられました。
 
 この場面だけでこの舞台を観た甲斐があったというもの。リチャードの口から溢れ
る言葉はどこまでも「正しい」。心をそちら側に傾ければ楽になる…最後にそれを決
めるのは己の心。リチャードの言葉に心を動かす者たちをリチャードは嘲う。
 そして最後はリチャード自身もその罠にはまってしまうように見えました。
 
 リチャード王は滅ぼさねばならない「悪」なのか?正義と神の名の元で最後にリッ
チモンドに数々の甘い言葉を生み出した喉を掻き切られるリチャード。
 彼を「悪」にしたのは何なのか?
 彼が消えて新たな王の演説が響く中で再び天からあらゆるものが振ってくる。
 その向こう側で微笑む司教、前王の時代もリチャードの数々の謀略の中でも、そし
て新王の元でも変わらずに居続ける姿が怖い。

 香寿さんのアンは男勝りな感じの貴婦人。リチャードに己の美貌を誉めたたえられ
て父や旦那を殺した相手に心を動かすとは・・・うーん美人って怖いなぁ。
 子役の子たちが皆上手だったのも良かったなぁ。幼いながらも王の風格を感じさせ
れる兄と利発で賢そうな弟の2人がとても良かったです。
 皇太后や先代王妃の2人の女優さんはお年のせいか台詞回しが怪しくてねぇ、それ
が残念でしたな。まあ、ある意味でリアルなお婆さんたちだった訳ですが(^^;
この2人のシーンでちょっとだけ睡魔様が降りて来てしまいました。でも、新王の
リッチモンドが登場した途端に目がパチッ!と(苦笑)。tLotRのアラゴルン王みたい
なビジュアルの俳優さんでエラく素敵なリッチモンド侯でした。(一緒に観ていたお
友達全員が同じ状態だったことが後でわかってまた苦笑。『ペリグリーズ』を観た
時にも思ったのですが、蜷川さんってtLotR好き?)

 全体に市村さんの魅力に引っ張られた舞台でした。なかなか面白かったですが、
もっと「悪漢」としてのリチャード三世も観てみたいかなー。

2003年12月21日(日)
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