初日 最新 目次 MAIL


日記 / チカフジ

お気に召して頂けたら、ぽちっとな。

ご感想をどうぞ。



日記
チカフジ|MAIL


2002年07月09日(火)
読書感想

「左眼を忘れた男」浅暮三文著/講談社ノベルス


以前に上遠野氏の「殺竜事件」もしくは「紫骸城事件」について語った。
既存のミステリと同じだと思って読むと危ない、あれらにはファンタジーの要素がきちんと盛り込まれている、我々の現実で起こることを前提にしていては悪酔いするーー。
そんなことを書いた。

今回読んだこの作品「左眼を忘れた男」も悪酔いするアルコールの強いカクテルだった。
完全なファンタジーではなく、舞台設定が日本、東京なのだからまた質が悪い。
なんというか、まあ最初から奇抜な設定(ーータイトルからある程度予想がつくと思うが、ばらしてしまうと「左眼単体で存在しているにも関わらず視力は通っていて左眼の視た映像を本体が受信することが可能」という主人公がいるという設定ーー)ではあるのだけれど、途中、というか割合最後のほうで大きなこと(設定)が明かされて、またおかしなことになる。
読後、私はそれが、まるで世界がねじれてしまったような感じ、だと思った。
そのねじれ加減には、はっきりいって酔う。
ちょうど、大好きなジェットコースターに乗ったはいいけど予想外の捻りの連続に気持ち悪くなったようなそんな感じだ。
でも別にジェットコースターが楽しくなかったわけじゃない。気持ち悪さの方が少し勝るが。
「左眼を忘れた男」は本当にちょうどそんな感じだった。
悪酔いする。
ジェットコースターでの「気持ち悪さ」は「理解し難さ故の気持ち悪さ」に置き換えて。

本の折り返しで作者は「これミステリーか?/たぶん。/じゃ、ファンタジー?/近いね。/コミックノベル?/一部は。」と語っていた。
読み始めはなんだこけおどしか?と思ったが、読後、それは「ああ、確かに…」に変化した。
もう一度読む気になったらその時こそ覚悟して読まねばなるまい。
現実世界が舞台だが、この小説はファンタジー色が強烈だ。

西澤保彦のようなSFミステリならば私はすんなりと消化できる人間だ。
「こういう設定(ルール)の上で殺人が起こります」というのを明示してくれているのと、西澤氏の大抵の作品においてその「設定」はある程度の規律・もしくは規則を守ってくれるため、心臓に悪くない。
そこがすきで良く西澤氏の小説は読む。
その西澤氏の小説を口直しに読みたくなるくらいには読後感は悪かった。悪酔いのし過ぎで。
私にはこの手の「悪酔いのするミステリ」というのは受け付け難い。
けれど最近の講談社ノベルスにはこの手の本が一昔前より増えたんじゃないかと思う。
一昔前の講談社ノベルスは探偵物・新本格一色(というと語弊があるが…)だったように思うが、今は少しそれとは違ったものも入れてくるようになったと感じる。
最近の読者にはこの手の物も受けるということか。

しかしやはり私は探偵物のほうが好きだ、と改めて実感した読書だった。







※そんなに数は読んでいないが今まで読んだ中での
 ある観点から見た講談社ノベルス一付け


ーーーーーーーーーーーーーーー
余裕で受け入れられるもの

       西沢保彦、森博嗣、京極夏彦、など
       (探偵物、「新本格」)

ーーーーーーーーーーーーーーー
受け入れられるもの

       殊能将之(「ハサミ男」)

ーーーーーーーーーーーーーーー
受け入れ難い、
あるいは「悪酔いする」もの
(でも面白くないわけじゃない)

       上遠野浩平(「殺竜事件」、「紫骸城事件」)
       浅暮三文(「左眼を忘れた男」)

ーーーーーーーーーーーーーーー




事後報告になりますが、バイトの話。
やっぱりやってく自信がないように思ったので、バイト希望を取り下げさせていただいた。
久々の電話口で親に「居酒屋ってのはあんたには向いてないって!だってあんた機械的に作業こなす方が得意でしょう」と笑われた。
確かになー。
でもなんか挑戦しなきゃって思うんだよなー、そういうバイトにも。