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フリージアまで一緒 - 2001年08月16日(木) ふたり一緒のお休みは、途切れ途切れの何回かの電話で終わりかけてる。あの人は、久しぶりに友だちと集まって、夜は鍋パーティをすることになったらしい。「よけいなこと考えてるだろ。ほんとに男ばっかりだって。心配しないの」って、読まれてる。最近彼女に会うって言わない。わたしが聞かないからかな、とも思うけど、ほんとに会ってる時がなさそう。でもそんなわけないか。それにしても、また鍋パーティって。 お鍋に行く前に話して、終わったらまた電話をくれる。あの人の夜中。わたしのお昼。あのベタベタする熱気の何日かは終わって、もう風が冷たくて気持ちいい。外に出なくちゃと、動かなくなった腕時計をふたつ持って電池の交換をしてもらいに行った。近所の宝石屋さんはちゃんとした格好をしたお金持ちそうな年輩のお客さんばっかりで、すっぴんでぼさぼさ髪でショーツにタンクトップ、おまけにノーブラっていうのが浮きそうだった。でも変なところで気合いが入って、胸を張ってドアを開ける。サンダルだけはヒールを履いててよかった。店員さんはそれでもとっても丁寧に応対してくれた。 何軒か隣りのデパートにもふらっと入る。アクセサリーの売り場で、老夫婦のおばあちゃんが NINE WEST のネックレスをおじいちゃんに見立ててもらってた。会話を聞いてると、NINE WEST がとっても好きみたい。あんな年で NINE WEST なんかつけるなんておしゃれ、と思った。ああいうおじいちゃんとおばあちゃんは、ビーチを手を繋いでお散歩するんだろうなって羨ましかった。 なんか素敵な午後だった。夕方うちにいると電話がまたかかった。お鍋でちゃんと寝てないのに、朝からライブの練習に行く。お休みったって、忙しいんだ。それなのに「せっかくの一緒の休みだから」って空いてる時間をずっと電話に使ってくれる。電話代いいや、なんて思ってしまう。どっかで節約しよ。なんとかしよ。こんな日はめったにないもの。練習を早めに切り上げて帰って来て電話。少し寝て、また打ち合わせに行く途中に電話。 「時間減らして、濃い電話しような、これからは。」 「何? 濃い電話って?」 「ケンカしたらもったいないってこと。」 だめだよ。ケンカじゃないもん、あれ。辛いときは泣いて困らせさせてよ。 「やだ。わかんない。」 「ほらー。またそういうこと言う。」 うそ。ずっとこんなに優しいのが続けば、泣かなくて済む。やっぱり済まない。わかんない。あんまり優しくしてくれたら、ますます欲張りになっちゃう。それでよけい苦しくなる。でも優しくして。ちがう。いつも充分過ぎるくらい、優しい。優しくないときなんかない。なのに苦しい。だから苦しい? だけどもう「やめよう」だけは聞きたくない。あのときのあの人の声は悲しすぎた。 今日は知らなかったあの人を知った。小さい時、おおきくなったらお花やさんになりたかったこと。そんなことまで一緒だった。なのにお花の名前なんかよく知らなくて、それでもフリージアだけは昔から知ってたって言う。わたしもフリージアは小さいときから一番身近な花だった。母がお手洗いに欠かさず生けてた花だったから。よくあることなのかな。でも胸がきゅんとなった。そんなどうでもいいことでも、おんなじだって思えることがたくさんある。それに不思議なくらい、おんなじ感じ方をする。なんでわたしじゃないんだろう、ってまた切なくなる。だけど、それだからなおさら現実的じゃなくて、実現性のない関係なのかもしれない。 明日の朝は、電話で起こしてくれる。「ちゃんと目が覚めるまで、話してあげるよ。きみが出かけたあとに、メール入れとくからね」。途切れ途切れの電話にちょっと不満だったバカなわたし。一緒のお休み、あなたがこんなに素敵にしてくれた。 -
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