love and kisses ーきみのくちびるに - 2004年02月14日(土) 来てくれた。 地下鉄に乗って来てくれた。 地下鉄の駅からローラーブレードはいて、来てくれた。 デイビッドは壊れた車を廃車して、もう車がないから。 ローラーブレイドはいて背がうんと高くなったデイビッドが、ドアを開けたら「ハッピー・バレンタインズ・デー!」って笑って立ってた。 バレンタインズ・デーだからわたしの車でディナーに連れてってくれるって言ってたけど、外に出るのがわたしはまだ怖かった。わたしはうちで食べられるようにディナーを作って待った。パンプキン・フランのデザートも作った。痛みはかなり和らいでるし、ちょっと無理してそろりそろり松葉杖で足引っぱりながら頑張った。 「ほんとに出掛けなくていいの? ずっと外に出てないだろ? バレンタインズ・デーなのにきみが片足でディナーを作ってくれて、僕はなんにもあげるものがないじゃん」って言いながら、わたしに持って来てくれたチョコレート、あんまりおなかが空いて地下鉄の中で食べちゃったし、大家さんのフランクがバレンタインズ・デーのお祝いにくれたお花を見て「車で来れたなら僕も花を買って来たのに」とか言う。でもいいんだ。来てくれた。 ケガした理由、わたし知ってるんだ。 余計なこと考えない、余計なこと悩まない、余計なことでイライラしてバカみたいなこと追求するんじゃない、神さまはわたしにそう言い続けてたのに、わたしがそれを聞かなかったから・・・ それで神さまはきみの足を折ったっての? そう。でも神さまは微笑んでるの。大したことじゃないよ、ちょっと痛いけどね、って。罰じゃないんだよ。これはわたしが変わるチャンスなの。 すごい空想だな、って、神さまをそんなふうには信じてないデイビッドは言って、空想じゃないよってわたしは笑った。わたしは足が治るまで、神さまがくれたチャンスを利用して、無茶して走り回ってた体を休めて悩み続けた心も休めてゆっくりいろんなことを見直そうと思ってる。 だからね、わたしもう、あなたに何も言わないし、何も聞かない。バカなこと。 サンキュってデイビッドは微笑んだ。 足がすっかり治るころには、わたし別のわたしになってるんだ。 風邪を引いてまた喉を痛めてるデイビッドは、帰る少し前に「手出して」って言って、差し出したわたしの腕を取って手首にキスした。「やだ。ちゃんとキスして」って言ったけど、足折ってるうえに風邪うつすわけにいかないだろってしてくれない。駄々こねて何度もせがんだ。「赤んぼみたいだ」「赤ちゃんなの」「だめだよ」「デイビッドはバレンタインズ・デーにキスしてくれなかったってみんなに泣きついてやる」「僕はね、国が決めた日じゃなくて自分の決めた日にロマンティックになる」「国が決めた日じゃないよ」「コマーシャルが決めた日」。歴史が決めた日でしょ。やっとキスしてくれたデイビッドの首にわたしは抱きつく。「ちゃんとキスしなよ。くちびるが動いてないよ」って、そのくらいちゃんとキスしてくれた。「これくらになら風邪うつらないかな」って言いながら。大丈夫だよ。うつったって。 帰り際にもう一度ねだった。ローラーブレイドはいてまたうんと背が高くなったデイビッドは、わたしが片足で必死で背伸びしても苦しいくらい背が高かった。「このくらい背が高かったら嬉しい?」「ううん。あなたの背の高さがいい。前はうんと背の高い人が好きだったけどね」。5フィート11インチなんか、もうほんとにどうでもいい。5フィート8が今はいいんだ。超イージリー・アジャスタブル恋心。便利でしょ? 愛してるなんて言えなかった。 だから、デイビッドが帰ってったあとに送ったメールの最後に書いた。 「I love you」。 うちに着いたデイビッドから返事が来た。 「ああ、ややこしいことになるよ僕たちは。きみが「L-word」なんか使うから。危険だ」。 そうなんだ。いつか「ハウス・キーパー」ってフランス映画観たときも、彼が彼女にとうとう「I love you」を言っちゃったときデイビッドはおなじこと言った。なにが危険なんだかわたしにはわかんない。 だけどデイビッドはメールの最後に書いてくれたんだ。 「love and kisses ーきみのくちびるに」って。 -
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