人との間に「壁」を感じる時、それは冷気でなく暖気だ。…いや、 暖かいというより寧ろ、人肌の、生そのものの感触だと言う方が 良いのか。…誰かとは完全に交わり切れない事を知ると、そこには 安心感が鎮座する。近しい人が他人である事。自分に良く接して くれる人が、自分とは完全に違う、血のつながりの無い他人だという 事。それは不思議な安心感。
肉の壁、心の壁、全ての壁という壁について、その尖端、その表面 に触れる事で、自分と他人の境界線ははっきりと自覚される。 そうして初めて、自分が誰かの側にいることを実感する。
だから、その壁に触れたくなるのかもしれない。
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