私の知ってるある人は、カラッポの自分を埋める為に、男と寝る。 そのコは、今あるそのコは、全てがそれまで付き合った男の子の 断片で更生されていて、サッカー部の男と付き合えばサッカーを 詳しく知り、野球部の男と付き合えば、野球に詳しくなるような、 そんな女だった。
彼女の好きな物も、彼女の好みも、はたまた彼女は着る服の好み まで、いつもその時付き合っている彼の好みで統一する。
私は彼女を怖いと思った。嫌いではないけど、とても怖かった。
彼女はカラッポの自分を埋める為だけに、男と付き合うから、 きっと本当は、ある程度好きでさえあれば、誰でもいいのだと思った。
私は、自分に足りない物を持ってる人が好きだから、誰かを好きに なったら、その人を欲しいと思うし、それが私にとってのスキマをも 埋めてくれるのが気持ちよくて、だからその人と付き合って、 抱くのだけど、彼女には、何も、無いのだ。
スキマではなく、常に彼女はイレモノとして、男の好みに従事する だけに過ぎない。彼女の大切な物って、一体何なんだろう…?
私は、彼女だけが好きな物があればいいと思った。それが彼女を 構築するといいと思った。だけど、今日も彼女は今の彼の好みを知る 努力に夢中で、相変わらずだ。話は四六時中その男の話で、彼女の 毎日は、彼にメールする事と、彼の電話を待つことに費やされていた。
そんな彼女を見て、心はやるせなく、身体には悲しみが滲んだ。 そこには、最近私が感じる、希薄な世の中の切れ端が見え隠れするような 気がして、乾燥してかさついた人の心が、また少し怖くなった。
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