貴方もまた、私を忘れてしまうのでしょう。
私は、通り過ぎる全てを忘れて行きたいのです。 だから、貴方に抱き締められた事も、 握り返してくれた掌の温かさも、 笑う時に細める目も、その胸の厚さも、いつか全部 誰かの何かと一緒になって、心の中で溶けていって しまうのです。
「貴方」が、私の中の「貴方達の部品」に変わっていく。 それまでは、確かにひとつだけであった、 貴方だけの何かが、それと判別する為の殻を失って、 多数の、数えられない、どろどろの、何かに変わっていく。
耐えられない苦痛。 忘れられていく。貴方が私を愛してくれても、 私もまた、あなたの事を忘れてしまいます。
貴方のくれた言葉の全てを、忘れてしまうのでしょう。
だって、私は生きているから。
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