安政五年の大脱走@うおこ♪
by:うおこ♪
The Great Escape of 1858 という文字と、 柱のようにそそり立つ崖が印象的な表紙。 安政五年の大脱走/五十嵐貴久著(幻冬社)
安政5年、井伊直弼に謀られた津和野藩士51人と、 姫の美雪が脱出不可能の山頂に幽閉される。 与えられた期間は1ヶ月。 海からも山からも逃げられない状況で、出した結論は土を掘ること。 掘るための道具もなく、極限状態。 誇りと希望を忘れない男たちの一途な思いと流した血が奇跡を呼ぶ。
安政の大獄というのを歴史の時間に習ったことは、 なんとなく覚えていたのだけれど。
米海軍提督ペリーが開国を迫り、激動の時代の幕開け。 水戸家徳川斉昭(なりあき)を中心とした尊皇攘夷派と、 幕府開国派の暗闘は熾烈なものになっていった。 諸外国の情報を入手していた幕府は、軍事的な意味で自国が不利だと知って、 穏便に鎖国を解きたかった。 しかし水戸家をはじめとする在野勢力は鎖国の維持を求める。 通商条約の締結を求めるアメリカと、それを拒む尊皇派との間で幕府は困惑していた。 この事態を解決するために強大な権力を持つ政治家を時代は必要としていた。 井伊直弼が安政5年に大老に任命され、日米修好通商条約を結んで、 横浜と函館を開港する。 京都朝廷の許可を得ないまま諸外国との条約を締結していったので、 攘夷派は反対運動を激化する。 それを鎮めるために、弾圧を加えて、対立は深まっていく。 日本の激動の時代が背景になっている。
当時の習い事の記述に、 「算術・舎密学(せいみがく)・和歌・茶道・華道・書道」などが出てくる。 美雪姫は、和算の高度な問題を苦もなく解き、 蟹行文字(かいこうもじ)と呼ばれたオランダ語に精通し、 天体学・物理学・医術まで新しい学問を深めていった。 いつの時代も習い事が上手な人っていたんだろうな。
当時の服装も興味深い書き方をしている。 「黒羽二重(くろはぶたえ)に剣かたばみ紋を付けた縮緬(ちりめん)羽織。」
さて、この小説の内容はタイトルに「大脱走」とあるので、 基本的には脱走劇ではあるのだけど。 深読みすると、当時の恋愛とか、結婚などの考え方が出ていて面白い。 スティーブ・マックイーンの「大脱走」や、 「ショーシャンクの空に」などの脱走劇を彷彿とさせる。 道具のない状態で穴を掘るとか、見張りのごまかし方などが、 ハラハラドキドキして楽しめる。
若い世代にも解りやすいように、難解な漢字にはルビがふられているので、 漢字が読めなくてリズムが崩れることは少ないかも。 ・全身に力が漲る(みなぎる) ・剃りたての月代(さかやき) ・やりかたが因循姑息(いんじゅんこそく) ・畏れ(おそれ)をいだく ・跪いて(ひざまずいて) ・殺されることは必定(ひつじょう)
ネタバレしちゃうので、結論は書けないけど、 最後まで読んだら、もう一度確認のために読み返したくなる。 「ああっ、こんなトコに書いてあるじゃないか!」って気付くと、 二度楽しめると思うよ。 読み終わったあとに「にやっ」ってするかも。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 Dear ぴこ
萩尾望都作品は大好きです。 トーマの心臓のオスカー・ライザーが好きで、うちの犬にオスカーとつけたくらい。 今飼ってるちょび犬もユリスモール(略してユーリ)とつけたかったんだよなぁ。 11人いる!は映画にもなったけど、映画のキャラが濃すぎ。 フロルのころころしたかわいさが出てなかったし。 しかも「エースをねらえ!」のキャラが11人いる!を演じているようで。
萩尾作品を理解するには同時期の漫画家の作品も読んでみるといいかも。 竹宮惠子・大島弓子などなど。SFは面白いです。 特筆するなら、「岡田史子」。 1967年のCOMに掲載された「ガラス玉」が当時の女子高生に与えた影響が、 のちに50年代生まれの漫画家に与えた影響は大きかったみたい。
ロード・オブ・ザ・リングのレゴラスをやってるブルームくんは、 山咲トオルくんに似てるよね。(≧∇≦)
さて、やっと1ヶ月以上続いていた咳が止まりました。 寒くなってきたので、手先が冷たくなるね。 体に気をつけて踏ん張ってね。
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