ひさしぶりのデート。 普段よりもちょっとだけ丁寧なメイク。
あんな別れ方をしてしまったけれど、 あれからちょっと気になっていた、彼。 彼との将来を想像しなかったといったら嘘になる。
自分勝手な彼。 わたしのことなんておかまいなしの彼。 この人が恋人だったら、 わたしは振りまわされて疲れきってしまうだろう。
それでも、彼のキスが懐かしかった。
ちょっとだけ抱いていた期待は砕かれた。 誕生日おめでとう、の乾杯は驚くほどそっけなくて 「彼じゃない」ということを痛感させられた。
わたし、いつになったらちゃんと恋ができるんだろう。
おめでとう。 まさかあなたたちが優勝するとは。
表彰の瞬間、自分のことのようにうれしかったよ。 呼ばれた瞬間、鳥肌が立った。 誰にも気づかれないように、そっと喜びをかみしめた。
海の上でペナルティを要求したあなたたち。 その要求を取り下げたのは相手がわたしたちだったから? 勝負の妨げにはならないと判断したから?
・・・それとも「わたし」だったから?
わずかな期待と一滴の自惚れ。
本当はおめでとうって伝えたかった。 よかったねって伝えたかった。
でも、やっぱり遠くから見ていることしかできないんだよね。
君に会うのはどれくらいぶりだろう? ハーバーに行くたびにいつも探していた姿。
わたしのこと、おぼえてる?
海の上でもそっと君を追っていた。 追いつけるはずなんてないけれど、ずっと見ていた。 トップ集団、まぶしい太陽。
シャワーを浴びて走って行く。 あの人と、BMWと、そして、君。
新人の彼もカッコイイと思った。 けど、やっぱりわたしの意識は君に向く。 狭い車内、響く声、絶えない笑い。
もっと、君のことが知りたい。
恋の予感かどうかはわからないけど。
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