詩のような 世界
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彼は私の夢に出てくると いつも最初は笑っています 私だけを見て私だけと通じ合う そこでは絆みたいなものを感じるのです
でも場面が変わるごとに 彼の気持ちも変わるようで 気がつくとこの手を離している 私は彼の行方を探すのでした
そして溜息 やっぱり彼は知らない女の下で笑い 視線を彼女だけに向けています 私を「なかったこと」にしているのでしょうか
だけど彼を責める気にはなれないのです むしろ自分から別の人に移る彼を 自然だというふうに眺めています 彼に対する情は深くないのかもしれません
それとも逆なのでしょうか 私が感じる「絆」は 小さなことはどうでもいいことであると 認識していたとしたら
可能性は後者のほうが強いみたいです 私にはこれからも彼の夢を見るという 確証めいたものがあるからです 逃れられないとわかっている
この先彼は何度私から去っていくのでしょう この先私は何度傍観者になればいいのでしょう この先
この先夢は呪縛のごとく現れつづけるのでしょう
水色の目玉がぐるぐると回り始め 上下左右の感覚が曖昧になると やっと見えてくるものがあるようなないような
金色のふくろうが天に描かれた 僕はふくろうの住処を探すため 息を止めて地下に潜り込んでいった
洋館は僕を手招きしたので いちにのさん、で右足を踏み入れた たくさんの仲間たちがテーブルを囲み くちばしをカチカチ鳴らす陽気さ
まるでたった今生まれたような気分にさせられ ローストビーフを一気に噛み切ると 彼らが僕をあたたかく見守っているのに気づいた
僕は涙がレモンジュースを薄めるまで泣いた 何が現実で何が幻想なのか そんなことを考えないように延延と
地が咽び泣く
花が千切れる
風は砂を伴い
雲に従い行く
踊るための靴を持っていないことに気づいた
薔薇の刺が足首に食い込む
抵抗する眼差しはどこへ
遠い茨の道で迷ったのだろうか
刺激のなさこそ1番の刺激だ
求めないから失望はないが
モノトーンの世界を広げるばかり
水が欲しくても草花は枯れるのを待つだけ
クマの縫いぐるみが線路に落ちていた
それが人じゃないから誰も目に留めない
首筋が凍り舌が強烈に乾き始める
見えない糸はもう切れようとしている
ハロー、と小鳥の亡き骸が鳴いた
グッバイ、と日溜まりが手を振った
夜空の下に立つと
雪が真上から落ちてくる
冬の匂いは夏のそれより少し弱い
だから雪がシグナルになるしかない
彼のコートの材質をチェックする
かっちりした黒
雪の粉は吸い込まれる瞬間
彼に気づいて欲しがっていた
この演出を素直に喜ぼう
唇を見つめて見つめ返されよう
黒い空に飲まれないように
彼の睫毛だけを頬に感じるために
やぎさんが紙を食べたから
ぼくはきみを探す決心をした
湯船の中に潜り
ただひたすら
ぼくと幻想を育てましょう
きみの力が必要なんだ
「真実」なんて1番もろいから
曖昧なものほど確実なのだから
4本の手にありったけの静寂をこめて
存在しない園をつくろう
ぼくたちは個体だけど
一体化しないからこそ見出せるんだ
ひたひたと 冷たい音を立てながら 青の足跡はどこまでも続いていく
シロウサギハ シンダ
あたしは布団の中に住む 相棒を探している 大陸を繋げたい
呪術師は大人の男に限る 闇の雫が心の穴に溜まる ぽたぽた、ぽたぽた、ぽたぽた……
シンダ
誰を憎むでもない 祈りとも呪いとも取れる言葉が 彼を通してあたしの本音となるのか
視力を失った生き物が 足音を聞きつけたようだ もはや全てが暗い青に侵された
シンデイル
乾燥した土の子たちが乱れ飛ぶ ぴょん、と長い耳が泣く 遠くの方で誰かが主電源を切った
守るべき存在はなし
だからあたしはどこにでも行ける つまりどこにも行けないということだ
この世に「永遠」がないなら 無を求めるしかない
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