詩のような 世界
目次|←|→
ずっとそこに立っているだろう 化石になるまでそこにずっと
後退しようが前進しようが 原点は1箇所
飛び上がって 歌い尽くして 自棄になって 塞ぎ込んで?
何したって戻って来れるんだ 目立たないけれど確実な僕の指定席
この場所を選んだのは僕で 選ばれたのも僕だ 信じてるのは僕で 信じられているのも
ね とても素敵なことなんだ
青と赤が渦を巻く
ある大人は 気味の悪い鳴門だ と軽蔑の眼差しを向け ある子供は 宇宙人と人間の血の融合を願った
今日は夜が来ない 朝はしぶとく地に居座っている 社会は混乱した ある少年は狂乱した 永遠に眩しい世界だなんて
鼻の穴が辛うじて出るところまで 土に埋められている ぎりぎりで呼吸ができる 皮肉だ 風に運ばれた花粉が鼻腔を容赦なく刺激 ああ それでも生きてゆく ああ 生きてゆくさ
この素肌 切り取って
アナタニアゲル
いらないならポイして 海の中や 樹海はやめてね サミシイカラ
人の気配を感じられるところ そうだ スクランブル交差点の中心 もしくは 日の当たる病院のロビーがいいわ
たくさんの生活のにおいに紛れて わたしはわたしを見つけられなくなるでしょうね 夏も冬も どうでもよくなって となりにいる人が誰なのか どうでもよくなって あなたのお名前は?と聞かれても どうでもよくなって 撫でられても引き千切られても どうでもよくなって
あなたを捕まえて 無責任に委ねたこと それだけが心残り
と、わたしの欠片が疼いて
ゴメンナサイ ゴメンナサイ
簡単に掻き消されてしまう
だから 安堵して 眠れるの
ドアを開けて右側の壁に 彼女はいる いつも微笑んでくれる 僕の女神であり 恋人でもあり 親友でもある
僕は生きとし生ける物にナイフを向けたい そう話したときも 君はゆったりとした笑みを湛え この目を見つめてくれた 君には言わないでおいたけれど 生まれて初めて泣くことができた瞬間だった
外は狂気に満ちていて 君のいるこの部屋だけが安全地帯だ 唯一息を吸えて、吐ける 五感を封印せずにいられる
だけど 君の紫色の瞳が ときどき僕の心臓を狙っているように感じるんだ もしかして狂気は 君が世界に発信していたのかい? それとも 君まで世界に侵され始めたと言うの? どっちみち、僕も取り込まれるわけか でも君をビリビリ破ったりはしないから安心して
世界を殺しても君を殺しても 僕は確実に消えるだろう だから僕は君を抱きしめ続けるよ
抱きしめ続けるよ
愛しさと 憎しみを ぐちゃぐちゃと 粘土をこねるように混ぜたら 丁度いいブレンドになった
僕は愛に飲まれてしまおう
すきだ すきだ すきだーっ
あ い し て る。
お湯をかけて3分で出来上がり まるでシェフ気取り そうやって簡単に簡単に 僕は愛をつくってしまおう
笑顔で振り向くと 目の前には無表情の君が棒立ちになっていた 母親に置いてきぼりを食った幼児のような顔をして
君は 見えない。とだけ言った 唇をほとんど動かさなかった 君の小さな抵抗、僕のつくりものに対する拒絶
お湯を吸って膨張したラーメンが 毒々しいカラフルな模様の蛇に変貌し 僕の左胸にずるりと潜り込んだ
見えない。とだけ言った のは僕も同じだった
うえはあかるい そこはくらい
ねえ 本当にそれって常識なんですか?
そこはくらい と自信たっぷりに言うなら あなたはそこに行ったことがあるんですか
うえ 逆立ちしちゃえば うえはそこになりますが あなたは逆立ちすらしたことがないようだ
そこってここ? 溝鼠がいそうな暗黒だから底?
うえってあなたのいるところ? 輝くためには飢えるべきだと?
うん わからないよ 僕はあなたには近づけないから 高いのか、低いのか 感覚が麻痺しているのか、 それとも
ふらり さらさら ふらり さらさら
ぼお ふふ ぽやあ ぷ
てくてく とっとっと がっ きゃ わあ
ぎゅ えへ …… きゅ
とん、とん、とん とん、とん、とん
にっこり にっこり
ただ1つのわかりやすいものだけに 心を奪われて それを目標にして 支配されたり 自分の糧にしたり できたら生きやすいのに
万華鏡のように くるくると顔を変えるさまは 極めて素敵だけれど 時々ついていけなくなる
ふとした瞬間 勢い良く回る車輪に体が巻き込まれる 痛み 穴
目の奥が冷たさで満ちてくる 命の次に大切な何かを探せと怒号が飛ぶ その度に息をしていることを自覚し 同時に鼓動が悲鳴をあげる
単純なものが愛しいよ 単純なものが憎いよ 僕はどのへんなんだ みんなみんなどこへいった
カラカラと回転する音が聞こえる 古く軋む骨のようだ 止まらない きっと壊れて弾けるまで
ああ
なぜ君と僕はまだ出会っていないのだろう? こんなにも必要とし合っているのに お互いの存在に触れることができないなんて
ヌメヌメとしたアスファルトの真ん中で 両手を広げて空を見上げている君よ 大きすぎる靴が1人歩きしそうだ 長すぎるマフラーが地面の汚れを吸ってゆく
マーガレットが綻びる頃には 足の裏を土で黒くしながら ちっぽけな星の裏側を駆け抜けよう 疲れたらこっち側に帰ってきて 小さな詩集を一緒に音読しよう
ある日ミサイルが雨のように降り注いだら 2人で大声を出して知らせよう みんなに 逃げて、と
君は大丈夫 僕も大丈夫 もし爆発して肉が焼け飛んでも きっと大丈夫なんだ 最高に怖いことは何かわかっているから ね
考えるだけで胸は躍るけれど 君も同じことを想像しているといいな
ね
満開の桜の下に埋まっているもの
あなたなら何だと話す?
目を閉じてイメージして
あなたなら何を思う?
ライトアップされなくても
夜桜はきっと発光している
あなたは淋しがるでしょうけれど
凝視しているから見えないだけよ
手をつなぎゆっくりと歩く
ぶら下がる提灯の波、波、波
その中に肌色のわたしたち
ともに揺らめくかのよう
交互に足を出すのに
土を踏みしめる感触がうまく伝わってこない
まるで静止しているみたい
両側の景色だけが後ろに走ってゆく
あなたはどちらかと言えば桜
わたしはどちらかと言えば死体
養分という名を借りて
1番近い場所からあなたをいつも見上げています
3年間放置したままの香水 鼻を近づけたら
まだ、甘かった
とっくに匂いは変わっているはずなのに 買った当時との違いがわからない
ね、僕、こんなものだ
新しい香り なんとなく欲しいと思えないんだ
親しんだわけでも、ないのに
酸化した液体を流しに捨てるべきだ トイレではだめだよ
しばらくの間、キッチンは懐かしい場所になるだろう
僕は頭を麻痺させながら ギターの練習でもするよ
かつて、誰かが、弾いていたように
窓を全開にすると 初めて出会う春の風が吹き込んだ
まだ知らぬ、穏やかな幕開き
世界へ
ああ あなたはたくさんのものを壊しながら ぐるぐると回り続ける気なのですね
瓦礫の下に埋もれたハート型の温もりが 徐々にその熱を奪われてゆく
劣化し 粉々になった残骸が 誰の目にもとまらないほどゆっくりと集結する
そのうち軌道の一部となる
ひびや傷跡はいずれ消え失せるように見えるものだ
何事もなかったように口笛を吹きながら あなたは今日も たくさんの涙に濡らされた、その手で
|