ファイアーボールブルース2

『ファイアーボールブルース2』読了。女子プロレスの世界を舞台にしたハードボイルド。くー,火渡さんイカスー。主人公は女子プロレス最強のレスラー火渡の付き人である近田という新人レスラー。火渡は天才的なレスラー(明らかに神取忍がモデル)で,それに引き換え近田は地味で華がなく,実力もない。この二人の対比がときに面白く,ときに悲しい。第一作目はミステリー的な部分が多かったが,「2」では,より女子プロの内幕と,近田の人間的な成長(と挫折)に焦点が置かれている。よりハードボイルドになったというべきか。特に,美人で人気があるため仲間から嫉妬される近田の同期のレスラーとの間で揺れる,近田という「持たざるもの」の気持ちは胸を打つ。あとがきも近田が書いていて(いや,そういう設定で),これまた泣けますね。
2001年08月10日(金)

僕たちは銀行を,作った。

『僕たちは銀行を,作った。』読了。ソニー銀行設立の内幕なんだけど,生々しい話は全然無くて,実に脱力系の本です。元々はメールマガジンだったそうで,全体に文字数が少なくて,本としてはスカスカの作りですが,そのぶん定価が安いのでした。おそらくメルマガにはなかったと思われる,これまた脱力系のイラストもよくマッチしていて,癒し系ビジネス書というべきものになってます。ソニーの本にありがちな「ソニーがソニーが」ってところもなくて好感が持てるのでした。
2001年08月07日(火)

語り手の事情

天才酒見賢一の『語り手の事情』読了。うーむヘンな小説。体裁はポルノだってのが,まず変わっている。主人公は「語り手」で,舞台はヴィクトリア朝のイギリス。語り手の館に,妄想を抱えた客が来ては,その妄想をぶちまけるというお話ですけど,何がなんだか分からないっす。興奮するようなポルノではないことは確かかで,「語り手」とゲストの「妄想」の戦い?が話の中心となります。「語り手」は,はるか未来のこと(つまり現代のこと)にも平気で言及しますが,語り手として地の文で述べるだけなので,小説としては破綻しません。ような気がする。ラストも妙な方向へどんでん返しが起きます。最初から最後までヘンな本。
2001年08月05日(日)

インターネットは儲からない

個人的に話題の本『インターネットは儲からない』読了。題名がよくなくて,インチキインターネット本と間違われそうだけど,中身はなかなかよかった。ほんのスタイルが変わっていて,数行から構成されるパラグラフが空行で区切られていて,積み重ねられるように続いている。これは他人が参照しやすいようにという配慮らしいけど,もう代理店のお兄さんあたりはパクリまくりそうなキャッチーさにあふれていますね。

話は大きく分けると3つあって,1つはインターネット黎明期における証言という側面。これは貴重で,こういう個人的な体験/証言というのはなかなか残ることが無い。大きな出来事のリアリティを伝えるのはこうした個人的証言の集合だと思うので,これからもどんどん残して欲しいものです。

2つ目は,60年代?から続く一種の民主主義ユートピア思想の現れとして,インターネットを捉える考え方で,これは一部はニューエイジ思想なんかと結びついて大変なことになっているので,手放しで歓迎するわけにはいかないかなあ。でもオープンソース運動なんかは,きっと『個人による全体への奉仕』みたいな考え方がベースにあるとしか思えないから,間違った使い方をするやつが悪いということかな。

そして3つ目がインターネットについてのするどい分析と提言で,おそらく多くの人はこれがメインコンテンツと感じることでしょう。私も思わず自分の仕事と照らし合わせて,考えてしまいました。企業が情報を提供してもユーザは決してお金は払わない。しかし,ユーザは情報に対して情報で応えることはある。という指摘は実に鋭いと思った。

インターネットビジネスのネタを探している人は一読をお勧めをします。
2001年07月28日(土)

カルト資本主義

『カルト資本主義』読了。いやあ,面白い。こんな面白い本誰も教えてくれなかったよ。日本ではなぜかオカルト的な発想がビジネス書のかたちをとることが多いことに気づいた著者が,日本の企業に潜むカルトを追ったノンフィクション。豪面白い。ソニーの超能力研究所,ヤマギシ会,京セラの稲盛和夫,永久機関の研究者,船井幸雄,「万能」微生物EMなどの取材を通じて,これらが全て「個から全体への回帰」をうたうニューエイジ運動につながることを暴き出す。そしてそれが,個人の支配を望む経営者に利用され,洗脳まがいのカルト化しているのであった。うーむ。
2001年07月24日(火)

わたしたちはなぜ科学にだまされるのか

『わたしたちはなぜ科学にだまされるのか』読了。世の中にあふれかえる疑似科学をとりあげた本なので,タイトルが逆やろ!というツッコミを受けている模様。この手の本は,カール・セーガンの「科学と悪霊を語る」とか,マーティン・ガードナーの「奇妙な論理」とか,と学会の「トンデモ本の世界」とか,最近はなかなかの激戦区になっている。そんな中でも,これはエエ本ですな。

永久機関などのトンデモそのものより,それが世の中に広まってしまう仕組みを追及しているのが特徴。科学者からニュースキャスターに転進したおじさんが繰り返し糾弾されているのが笑える。笑えないのが,「反電磁波キャンペーン」の話ですね。電磁波は健康に悪影響があるというのは,きわめていいかげんな調査の結果(手法もいいかげんで,サンプルも少ない)にすぎないのが,メディアで大キャンペーンをはったアホがいて(もちろん儲けるため),アメリカ中が(結果日本でも)パニックになったという。その後科学的な調査が行われて,電磁波が有害とする根拠はほぼ無いという結論になっている。うーむ。もう1つ。著者は有人宇宙探査は金の無駄と断言していて,これも面白い。有人の宇宙探査で得られた画期的な知見は何一つ無いとのこと。逆にボイジャーのような無人宇宙船があげる成果はすばらしいものがある。ところが「有人」の方が国民受けがいいとの理由で,政治家が有人探査を推進したがる構造があるという。うーむ,なるほど。

"政治家が推進したがる科学"というのは興味深いジャンルで,今後もウォッチしたいところです。
2001年07月23日(月)

BOB&KEITH

"ミリタリー自作PCコミック"という世界一アホなジャンルの連載漫画が一冊にまとまったのが『BOB&KEITH』。確か休刊になってしまったPC雑誌に連載されていたんだよなあ。「幻の傭兵」と呼ばれる二人(実は単なる日本人の兄ちゃん)が,PCを自作する話で,あまりに馬鹿馬鹿しいので内容は説明しないけどさ。笑う。
2001年07月08日(日)

この文庫がすごい

『この文庫がすごい』読了。精神世界モノみたいな表紙はなんとかならんか。「このミス」なんかと違って,「文庫本」という切り口だと自分の興味のない本が多いわけですが,そういう中に見落としていた本を見つけることがある。これが『この文庫がすごい』の存在価値ですね。私は「カルト資本主義」をゲットしようと思っています。官能小説大賞は毎回笑わせてもらっているが,受賞作ゆーてもちと買いにくいよねえ。bk1あたりでワンクリックで買えるようにして欲しいところ。
2001年07月03日(火)

夜のフロスト

『夜のフロスト』読了。ああ面白かった。厚い文庫もあっという間に読み終わってしまった。下ネタ炸裂のおっさん警部フロストの活躍を描くこのシリーズは,ようやくこれで3作目。全2作もメチャ面白かったけど,今回も負けず劣らずですね。体裁としてはモジュラー型(いろんな事件が同時多発的に起きる警察小説)なんだけど,フロストの場合ラストで絡みまくった事件が鮮やかに解決するカタルシスがあるのがいいです。とにかく次から次へと起きる事件,次から次へとフロストが巻き起こす騒動,次から次へと繰り出される場当たり的推理,次から次へとつかまる容疑者,とにかく息をもつかせぬストーリーテリングぶりで,まったく飽きることがないっす。傑作。
2001年07月02日(月)

メディアの預言者

『メディアの預言者』読了。正確な日付を忘れたので適当なところに書いておきます(実は書いているのは07/18)。時代を席巻した学者さんであるマーシャル・マクルーハンの諸作を解説し,現代にあわせて解釈しなおすという本で,「メディアはメッセージだ」しか知らない私のような人間でも,マクルーハンの業績がわかりますです。書物にまとめるのが嫌いであまり著作は残っていないとか,最初に日本に紹介したのは竹村健一とか,マクルーハン自身もブームの波に巻き込まれて大変だったとか,知らないことばかり。興味深いのは,彼はテレビというメディアを高く評価していたこと。そしてその根拠がテレビが曖昧なメディアで人々の想像の余地があるからだということ。さらに書物は固定的なメディアで人々から想像の余地を奪うのでよくないと主張していたことですね。これって今とは逆だよね。今は多くの人が,書物の方が想像する範囲が広いって思っている。マクルーハンは,メディアを「ホット」と「クール」に分けて論じてくるんだけど,これも面白い。つーか,こういうキャッチーなところがマクルーハンの本質のようだ。
2001年07月01日(日)

ま2の本日記 / ま2