インド待ち

『インド待ち』は,映画監督周防正行の本で,ワタシは別にインドに興味はないのだが,周防監督の本が好きなので買って読んだ。最近『踊るマハラジャ』つう映画が大ヒットして,インド映画に対する注目が集まっているらしいが,インドはでかくて多民族なので,複数の言語圏に分かれているのね。『踊るマハラジャ』はなんとか地方の映画なので,インドの他の地域では公開されていなかったりする。言語が複数あるってことは文化が複数あるということだろうに,インド映画ってどれも原色+歌+踊りだってのが不思議ですね。それとも哲学的映画を作る地方もあるのだろうか。
2001年10月19日(金)

カスをつかむな情報家電

『カスをつかむな情報家電』読了。なんか変な題名だけど,情報家電(といってもパソコンやPDAやゲーム機やソフトの話も出てくる)に関するコラムですな。出たのは1年ぐらい前なので,内容が古びてしまったかと思ったけど,そんなことはありませんでした。予測で書いている部分が,けっこう当たっているのも分かるし,軽い調子だけどまじめに調べて書いたのかもしれない。ときにはこういう風に網羅的に把握するのは必要っすね。しかし「情報家電」ってやつは本当に世の中に認められるのだろうか。レジデンシャル・サーバとか,やたらインテリな家電とか,どうだろう。

脱力系の,しりあがり寿のイラストが笑える。
2001年10月18日(木)

アダルト系

『アダルト系』の作者は永江朗。「噂の真相」の連載インタビューが面白かったので買ってみたです。この本は,彼がこれまで書いた記事の中から,ブルセラ,ブラックジャーナリズム,SM,盗聴などの'アダルト'な記事を集めたものです。いやーこの世にはいろんな人がいるなあ。みんな妙にまじめなのが笑えます。あとがきで花村萬月も言っているけど,企業の弱みをとことん取材して金と引き換えに記事を握りつぶすブラックジャーナリズムの話が一番面白いっすね。わたしはブラックジャーナリズムはでたらめ書いて金をゆすっているのかと思っていたので,これは意外だった。しかも「圧力で記事を握りつぶす」という行為は,いまや大手マスコミでも行われているわけで,なにをもって「ブラック」というのか。うーむ。
2001年10月16日(火)

カリフォルニアの炎

『カリフォルニアの炎』は,ニール・ケアリーシリーズで大人気のドン・ウィンズロウの新刊で,非ニールなので角川から出るらしい(ニールものは創元)。いやもう面白いのなんの,途中で止められません。舞台は火災保険会社で,主人公はそこの調査員。ロシア人の金持ちの家が焼けて,そこから奥さんの死体が見つかる。当局は失火と断定するけど,主人公はしつこく調査を進め,放火/殺人じゃないかと疑い始める。てなはなし。

保険会社の内幕もオモロイ。裁判の様子もオモロイ。マフィアの成り上がりもオモロイ。保険金詐欺の手口もオモロイ。なによりも主人公がいいです。とにかく四面楚歌の中で絶望的な捜査を進めるあたりが感動モノですね。ラストはワタシ的には意外な方向に行きました。
2001年10月04日(木)

暗号解読

科学読み物の話題作『暗号解読』読了。おもしれえ。暗号に関して,古代の歴史からたどって,RSAまで詳しく解説されている。技術面だけでなく,暗号のもつ歴史的意義にもスポットを当てていて,ナチスの使った暗号マシン「エニグマ」の仕組みとそれを解読した暗号解読者の戦いなんかは面白い。特に興味深いエピソードは,RSAの基本的な仕組みは戦時中にイギリスの軍部で開発されたが,軍の極秘扱いになったため,開発した人間はつい最近まで無視されていたことですかね。もう1つ未だに解けていない宝の場所を示した暗号が出てきて,これも面白いなあ。一攫千金を狙って人生を捨てたやつ続出らしい。

ちなみにRSAは「原理的に解読不能」だが,もし量子コンピュータが実用化されると簡単に解読されてしまう。でも世の中には頭のいいやつがいて,量子コンピュータを使った量子暗号ってのがすでに開発されている。うーん,いたちごっこ。
2001年09月30日(日)

波の上の魔術師

『波の上の魔術師』読了。「池袋ウェストゲートパーク」で,ワタシ内評価が急上昇している石田衣良の新刊。謎のじじいに雇われた三流大学生の話なんだけど,このじじいが実は株の天才で,じじいに鍛えられて大学生もマーケットの魔力にとりつかれていくってストーリーです。じじいは,ある銀行の株を大学生に調べさせるのですが,その裏には過去の因縁のからんだ思惑があったのであーる。キャラをたてるのが本当にうまいね,この人。特に大学生の恋人(こっちは先に卒業して商社に勤めている)とか,右翼のオヤジなんかが,いい味出しています。

おはなしの面白さは文句なし。あっという間に読めちゃう。なんか株に付いて詳しくなったような気になってしまう小説でした(つい「ZAI」とか買っちゃったよ)。
2001年09月19日(水)

仙人の壷

『仙人の壷』読了。読了つーか1時間ぐらいで読めてしまう,南伸坊のマンガのような本です。ワタシは酒見賢一の『墨攻』の挿絵で南伸坊を100パーセント見直したのだけど,この本は『墨攻』のときの絵とタッチが似ているので,喜んで読みました。中国の昔のお話をマンガにして,それに簡単なエッセイのような解説のような文章が着いている。とにかく,絵に味がありますね。話の選択のセンスがまたよくて,まったく唐突にブツっと終わるやつが多い。起承転結とかなくて,意味もよく分からない話が大部分なんだけど,これが南伸坊の絵とよく合うですね。
2001年09月17日(月)

ハイテク・ハイタッチ

『ハイテク・ハイタッチ』って何の本と説明するのが難しいね。基本的にはこの世にはびこる暴力表現なんかが子供に悪い影響を与えているんじゃないかという趣旨です。ヒステリックじゃないので説得力がある。

Doomという有名なパソコンのゲームがあるけど,これを改良したものをアメリカ軍が訓練に使っているという例を引き合いにして,これらのゲームを無制限にあそばせるのは,子供に射撃訓練をさせているのと同じだという主張です。どこぞの高校に乗り込んでクラスメートを撃ち殺しまくったやつは,一発必中でほとんど的をはずさずにひとり一発で殺していたという。これはゲームが訓練の役目をしたのだろうと言うわけです。なるほど。ゲームはひとを感動させる。これは間違いない。いい影響があるということは,悪い影響もありうる。これも間違いないと思いますね。そして,ゲームや映画やTVといったメディアを通じて提供される暴力表現は,いまや膨大な量になので,親がコントロールするのはもはや不可能。法で規制するしかないと著者は述べています。このへんは表現の自由ととの兼ねあいがあるから難しい問題を抱えていますな。
2001年09月15日(土)

陰陽寮 (4) (5)

『陰陽寮』4巻と5巻を読了。「晴明復活篇」とのこと。いやあ,なんという面白さ。上下巻があっという間に読めてしまう。この人は小説の中でときたまそれまでのお話をまとめて登場人物とかに説明させるので,記憶力の落ちてきたワタシにはとってもうれしい。3巻までは行き当たりばったり(としか思えん)に話が広がってきたのが,だんだん全体の構図が見えてくるのが今回のお話。不死人からロンギヌスの槍まで出てきて,伝奇SFの決定版という感じになってきました。盗賊の頭やら,政治のパワーゲームに明け暮れる平安貴族やら,浮浪児のリーダーやら,安倍晴明とその怪しげな敵たちやら,日本に上陸した異国の軍隊やら,もうキャラ立ちまくりなので,話の流れが自然と頭に入ってくる感じ。しかし本当にこの話は完結するのか。いや,これだけ面白ければ未完でもいいや。
2001年08月31日(金)

池袋ウェストゲートパーク

『池袋ウェストゲートパーク』読了。うーん,かっちょええ。池袋を根城にするチーマーなどの若者の物語だけど不快感はなく,ひたすらかっこいい。これは主人公(たち)が,イマドキの若者からもさらにはみ出した存在であるためでしょうね。池袋チーマーのボスである"キング",これに対抗する新興勢力のボス,主人公のマコト,池袋抗争を取材する女性ジャーナリスト,ドーベルマン殺しの山井,マコトにひとり娘の行方を探してくれと頼むヤクザの親分,池袋を徘徊するシリアルキラー"ストラングラー",キャラが立ちまくりっすね。文体もかっこいいし,痺れるっす。続編も,はやく文庫にして。

あと小説とは関係ないけど,「池袋ウェストゲートパーク」はTVドラマになった。そっちを先に見てハマったという(私にしては)珍しいパターンで,通常ドラマと原作は大きくイメージが違うので,あまり小説には食指が伸びなかったけど,読んでよかった。これぐらい,原作とドラマのイメージがぴったしってのもそう無いと思う。役者もよかったし,ストーリーも原作を無視せず・なぞるだけでもなく,両者で補完効果があったんじゃないかな。
2001年08月20日(月)

ま2の本日記 / ま2