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人の居場所 - 2005年05月11日(水) 今朝のNHK朝ドラ「ファイト」。 見ててとても胸が痛くなった。 主人公・優のお父さんはバネ工場の社長で、 職人的良心をもってコツコツ良き仕事をしてきたが、 ある日、先輩が課長だか部長だかをしている得意先の商社が自分のところのバネに別の会社の安上がりなバネを入れて卸している、という不正を知る。 彼は家族や工場のことを考え、ずっと黙っていたのだが ある新聞社のインタビュー中、自分の職人魂を語っているうちについそのことを口にしてしまう。 それを口止めしようとしたが、上ネタを手にした新聞記者がそんなことをするはずもなく、 大商社は告発記事にさらされ、当然のことながら制裁としてバネ工場には仕事が来なくなり、倒産する。 妻や娘の優はもちろん彼に「どうしてそんなことを言ったのよ!そんな取り返しのつかないことを。」と責めるが、 やはり家族である、彼を理解しようと務め、 しかしながら工場の従業員にせめてもの退職金を作るため家を売り、 妻は下の小さな息子とともに、友人の実家である温泉街の旅館の仲居となり家を出、父と優は工場で生活をすることとなる。 また父は夜の清掃のアルバイトを始める。 家族はバラバラになってしまう。 優は優で、中学からソフトボールをやっていて 親友の里夏(これが父の先輩で例の商社の男の娘なのだ)と、県でもソフトで有名な高校に入学し、2人とも当然のことながらソフトボ−ル部へ入部する。 しかしソフトボール部は中学と違って大所帯、監督にアピールして(個人指導を受けてヤル気を見せるとかお弁当を作るとか)手段を選ばず何とかレギュラーになりたい、という子ばかり。 優は疑問を持ち、焦るが、自分もムリしてそういう空気に合わせようとする。 そして優はレギュラーとなり、里夏は落ちた。 またそんな折に父の事件が勃発し、2人はそれまでの関係ではいられなくなった。 クラスでは里夏たち4人組の仲間に優は入れない。 みんなはケータイを持っているが、自分は「そんなものはいらない」と昔から欲しくなかったし、みんな自分の知らない話題で盛り上がって、自分はその場に居場所がない。 それでも優はソフトにだけは打ち込もうとしたけど、今度は足を負傷しレギュラーを外れた。 代わりに里夏がレギュラーとなった。 優はそんな折、ソフトをやめる決心をした。もう足がそれに耐えられなかった。 ソフトも失い、友達も失いかけている。どんどん居場所がなくなる。 それはイヤだった。 彼女にとって唯一の慰めは、近くの厩舎にいる馬のジョンコだけだった。 そして優はなんとかみんなに溶け込もうと努力をする。 ケータイも買った。勇気を出して、みんなの机で一緒にお弁当も食べるようにした。 気が進まなかったけどみんなでカラオケにも行った。 盛り上がる周りに合わせて、自分はちっとも楽しくなかったけど笑わなきゃならなかった。 いや笑うしかその時やれることがなかった。 その晩、仲間の一人からメールが入った。 すぐに返信をしなかったらあとで電話がかかってきて「そういうのは早く返信してよね」と文句を言われたが、何とか楽しく話そうとしたところお互いの父の話になった。 「私が優だったら、そんなことを告発する父親なんて許せない。そんなのチョーむかつくでしょ?」 優はもうこれ以上友達に嫌われたくなかった。 自分の気持ちを裏切ってこう話した。 「そうなのよ。もうどうしようもない父親だからほっといてるの。ホントむかつくよね〜。 家族をなんだと思ってるのかしらね〜。ホントイヤよ。」 無理に友達に話しを合わせた。 そしてその時後ろに父が立っているのに気づかなかった。 気づいた時父の顔は悲しそうだった。 優は呆然とした。 学校でもオフィスでも人が集まれば、人間関係は複雑だ。 うまくいってればもうけものだけど うまくいかないことの方がはるかに多い。 かくいう私も大変である。 そういう時どうするか? 道はおおざっぱに言って2つしかない。 今の優のように自分の気持ちを裏切ってでも 周りに合わせるか。 そうして波風立たないようにするか。 もうひとつは自分に正直になり、 周囲のおかしな部分に対して一線をひき 孤立してでも自分を貫くか。 私は後者になりかけている。 そしてそれはとても疲れるし、とてもツライ。 エネルギーが必要だ。 帰る頃にはストレスで一杯になっている。 いつから?どうしてそうなったのだろう、と思う。 以前はそうではなかったはずなのに。 周りが変わったのか、自分が変わったのか? しかしそう決めてしまえば正直楽な面もある。 とりあえず一線をひきつつ、仕事がきちんと進む程度には周りとうまくやっていこうとは思う。表面的にだけど。 優はこれからどうなるのだろう? どうしていくのだろう? 「ファイト」、朝ドラの密度とは思えないです。 ... 動物園と音楽界? - 2005年05月10日(火) ああ、ゴールデン・ウィークも終わってしまった。 10連休、ってまさにゴールデンな休みをとった人もいっぱいいるんでしょうね。 ま、でも私たちも足利の藤以来、 ちょこちょこと近場に出かけて退屈はしなかったけど。 ところで最近本にもなったらしいですが 北海道の旭山動物園が話題ですよね。 私は何ヶ月か前にNHK「クローズアップ現代」を見て知りました。 年間入場者数が上野動物園を抜いたとか、 破綻寸前の経営からの見事な再生、 そしてそれ以上の大躍進、ということで脚光を浴びている。 テレビ見て思いましたが、ホント実に魅力的で 「これならみんなこぞって行くよなぁ〜」と思うと同時に 自分がやっている音楽マネジメントの仕事のやり方についても 確信が持てたというか、励まされましたね。 どういうことかと言うと、 旭山動物園では、今までの「動物園」ってのは 動物をオリに入れて、それをみんなが周りで見るだけ、 という常識・固定観念から一歩も二歩も進めた、 というか考え直してみた、ということでしょうか。 つまり動物ひとつひとつの生態に合わせて 彼らのどういう行動が魅力あるのか、面白いのか、 というのをよく知り、考えた上で さあ、それではどんな「オリ」(?)を作り、配置をすれば良いか? はたまた観客もどこに、どんなかたちで居ればそれが見られるのか? というのを追求した結果が 入園者数の増加、リピーターの増加につながったのですね。 具体的にいえば、(私は一部しか知りませんが) 例えばペンギン。 普通見られるのは氷の上でヨチヨチしてるか、たまに水にザブンと飛び込むくらいですよね。 ところが彼らの泳ぎと言うのは驚異的に速い。 魚を追っている姿は相当に見ものなワケです。 ではペンギン館は普通に上から見るより、 客は水の下から見ればそうした行動が目撃できる。 アザラシなんかも然り。 またサルは、普通サル山を上から見て、 客はエサを放り込んだり、 母ザルが子供の毛づくろいをする姿とか せいぜいオス同士のケンカを見れるのが関の山。 しかし旭山では大きな高い木々の間に、 むしろ我々客の方がオリに入ったようなかたちになる。 そうすると上空に木々の間を飛び移ったりする、 見たことのないようなアクティブなサルの姿が見れる。 とっても基本に立ち返った工夫ですよね。 動物たちの魅力が120%発揮される。 そしてそれを見れる。 私なんかもこの仕事をしてると、思うわけです。 アーティストそれぞれに得意なレパートリーがあり、 光る部分があり、魅力の色合いも様々なワケです。 個性は十人十色、千差万別。 するとマネージャーは担当しているアーティストをみんな同じように売り込んだり(オーケストラやホールさんに)、 世間に同じようなアピールをしたってダメなワケです。 そんなことは当たり前…なハズなのに結構無頓着に、平気にそういう現状があるんですよ。 誰々の企画書、またどのマネージャーが作った企画書を見ても 区別がつかない。同じようにしか見えない。 違うのは写真だけ。 (すると当然見かけがいい方がトクなわけだ) このピアニストはオーケストラの定期公演で堂々と使ってもらうより、 ファミリーコンサートのような場でお話をしながらやってもらった方がずっと魅力がでる、とか このヴァイオリニストはドイツのレパートリー(ベートーヴェンとか)はいまいちだが 実は現代フランスの曲(ドビュッシーやラヴェルとか)をやってみたら誰にも負けない演奏をする、とかあるわけですよね。 (もちろんそれぞれレベルの差というのが存在するわけで、それは絶対に無視できないけど) つまりは対象をよく「知る」ということ。 よく「知れば」それぞれの打ち出し方が自ずとでてくるハズ。 発想がでてくるハズ。 そうして打ち出し方が的確であれば、アーティストの魅力も自ずとでてくるハズ。 旭山動物園の方々はそうしたことを突き詰めただけ。 私たち音楽関係者も本当はそうしなきゃいけないのにいつのまにかルーティン・ワークに陥ってる。 本当は簡単なことなのにね。 ...
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