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リターン・マッチ - 2005年07月05日(火) 先日書いたとおり、 フレイレのリターン・マッチ(?)で、 N響の定期公演に行ってきました。 今度は良かったですね。素晴らしかった。 マイハニーが「100%でないような気もするけど…」 と鋭いことを言っていたけど、 (それに先日の出来から、私も気持ちが身構えてしまったせいか若干そんな気もしたが) でも今度こそは巨匠のピアノを聴けた。 大家の風格。 ブラームスの協奏曲があんなたっぷりとした音量で、 しかもあんな美しい透明な音色とニュアンスで弾ききれるピアニストはそうはいない。 大体はブラームス流の厚いオーケストレーションの前に ソロの音が埋まってしまう。 (「女性蔑視」と言われるかもしれないが、私はブラームスのピアノ協奏曲は「第1」「第2」とも男性じゃなきゃ、本当の意味で弾けないと思う。) しかし、そういや最近N響定期では、 ブラームスのピアノ協奏曲、結構頻繁にとりあげられるな。 こないだピーター・ゼルキンの名演(準メルクルの指揮)を経験した気がするし、 ラルス・フォークト(マルク・アルブレヒト指揮)、 ブルーノ・レオナルド・ゲルバー(デュトワ指揮)、 ラドゥ・ルプー(サヴァリッシュ指揮)もそんな前じゃないんじゃないか? 私の大好きな曲だからいいけどさ。 一緒に心中してもいいな!(おいおい)と思わせるくらい好きで 胸の熱くなる曲。 そうそう、ピアノ協奏曲といえば、 先日アルミンク指揮の新日本フィルの演奏会に、マーラー「大地の歌」を聴きに行ったら (藤村美穂子さんのメゾ・ソプラノが相変わらず抜群の良さだった。世界第一級の声!) 前半のプログラム、モーツァルトのニ短調のピアノ協奏曲を弾くソリストが ウィーンの若手ティル・フェルナーから なんと!私が大好きな、やはりウィーンの代表格シュテファン・ヴラダーに変更になっていた。 フェルナーは病気だということで、 全然知らなくてビックリしました。 嬉しい驚き。 久しぶりに聴いたヴラダーは一段と鮮やかで 生きたモーツァルトを弾いてましたね。 しかしモーツァルトのニ短調の協奏曲、しかもアルミンク指揮新日本フィル、といえば そう、何ヶ月か前にアルゲリッチが「グルダを楽しく想い出す会」で超ド級の演奏をしたばかり。 でも彼のモーツァルト(カデンツァは自分で作ったらしい)、 アルゲリッチとはまた違う、 ウィーンに育まれたスタイル、香り、 それをもっと近代的にシャープに押し進めた、覇気満々の見事なモーツァルト。 考えてみれば彼ももう若手ではなく、 充実期に入っていく歳なのだな、と頼もしく思えました。 ... 誤算 - 2005年07月01日(金) コンサートは人間がやる限りいつもナマモノなのだけど 本当に何が起こるかわからないもの。 昨日は楽しみにしていた、現代ピアノ界きっての名手ネルソン・フレイレのリサイタルだったのだけど、 彼、とっても不調だったようだ。 私が好きな現役ピアニストの筆頭は、前にも書いたようにマウリツィオ・ポリーニで、 以下、マルタ・アルゲリッチやアンドラーシュ・シフ、クリスティアン・ツィメルマンやエフゲニー・キーシンといった感じだけど、 生理的に「ああ、この人のピアノがナマで聴きたい!」と時折思うのが ポリーニとともにこのフレイレ。 だってCD聴いてもわかるけど、素晴らしい音。 透明で柔らかくて(優しいといった方がいいかも)、 どんな複雑なパッセージも虹のように鮮やかに弾いてのけ、 唸りをあげる重低音から夢のようにキラキラ輝く高音まで思いのままの音を出す ピアニスト・オブ・ピアニストと呼びたくなるような人。 ああ、それなのに。 どうしてああだったんだろう? オール・ショパンのプログラムだったのだけど 最初の「幻想曲」から、オクターヴで駆け上がる難しい箇所は全滅に近く、 「黒鍵」のエチュードは途中でこんがらがって止めちゃうし 「英雄ポロネーズ」もなんだか早く終わりたい、みたいな突っ走り方で 音ハズシまくりで終いにはピアノの弦まで切れてしまった。 (ピアノの弦はどんなに力を入れて弾いても、きちんとしたタッチである限り切れるなんてことはない。切れるのは不自然なタッチで弾いたり、突然変なタイミングで鍵盤を押したりする時くらい) まさかフレイレが、 この巨匠中の巨匠から、 しかも他のピアニストから羨望の眼差しで見られるような最高級の音とテクニックを持った彼から、こんな状態のピアノを聴くハメになろうとは予想もしてませんでした。 病気でもしてるのかな?とも思ったけど いつものように静かに穏やかにニコヤカにお辞儀をしている様子をみていると 全然そんな風ではない。 それにフレイレに促されて慌てて舞台に飛び出した調律師が 7〜8分くらいで新しい弦に張替え (私も長くコンサート関係の仕事をしてるけど、こういうシーンを実際に見たのは初めて) その後弾いたアンコールは素晴らしかった。 曲はバッハの前奏曲、グルックの「精霊の踊り」、あと彼の故国ブラジルの作曲家ヴィラ=ロボスやモンポウの作品。 これは絶品だった。 赤ちゃんの産毛のような優しくて柔らかくて微妙な音色。 ここでやっと私の知っているフレイレに会えた。 もちろん演奏家は人間で、こんなこともあるんだろうけど (繰り返すけど)フレイレほどの大家から、 世界中の一流の舞台に何十年立ってきて、名声をほしいままにしている巨匠からこんな姿を見せられるとはなあ。 正直ビックリ。 彼は週末にN響定期公演でブラームスの協奏曲を弾くというので それを聴きに行って耳直しだ! あとこの日の前半、 私は久しぶりだったのだけど、演奏中、会場内で補聴器や録音機器を作動させた時に 特有の、微妙なピーピー音が鳴ってしまい、お客さんの一部が騒いでいた。 私にとってもこれは相当に耳障りでツラかったが、 主催者も対応にツラかっただろうな〜、と。 いやいや、他人事ではないっす。 ...
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