一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
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その5
血の気の多い連中達、怖いのなんのって・・・これでもかと思うほど剃り込んだ頭! 何処から頭か分からない眉毛を剃った顔!びっしり詰まった刺青!指が一本足り ない手!その中の一人が
「こんなとこえ座りくさって!刺されたいんかあー!」・・・・・(こわ!震えたわ!ほんまに!)
「はよ帰らんと!親分が帰ってくるやろ!あほんだら!」・・・・(自転車ほられてるし)
ふと思ったのは、もし、どついてくれたら近くの交番へ飛びこんで行けば、今までのツケが全部無くなるぞ!と、それなりに頑張った18才!でした・・・
四時間ほどたった頃でしたかね・・・大きな外車が目に前に止まり、今まで怒ってた連中が慌てて 車のドアを開けて米ツキバッタみたいにペコペコ
「おかえりやす!ご苦労さまです!」・・・・・(どうもこの人が親分みたいやなあー!)
下から見上げた、その顔が・・・なんと言うか、子分達が束でかかっても勝てないぐらい、子分達が 可愛く見えるてしまうほど強烈な顔でした!・・・・(まさしくそれは、ブラジルの巨象!オルテガ!)
その、オルテガ!とにかく顔が黒い!って言うか、ドス黒い! 後で分かった事だけど、どうも「肝硬変」だったとか・・・そのオルテガ!私を見つけて・・・
つづきは・・・・また今度
その4 ヤクザ〜 「な・に・し・に・来たんや!」…(何しに来たって、こんなとこに遊びにきいへんやろ!)
私〜「あのー集金に来・ま・し・た!」…(それにしても、どないしたらこんな怖い顔になんにゃろ)
やくざ〜「わかった、本人が帰ったら言っとくわ!全部でなんぼや!」…(言っとくって、君や!君!)
私〜「あのー全部で、¥46500です、お願いします!」…(ほんまに払う気あるんやろか)
そして、次の日また、その事務所から、「サービス・ランチが二枚」、注文!…なんで受けるんやろ。 嫌々、注文を持っていくと、
やくざ〜「本人が今、出て行って居ないから、そこに置いとけ」…(ほんまかいな?)
そして、食べ終わった頃に集金に行くと、また、本人が食べて外へ出ていない!この繰り返し・・・
そんな、ある小雨の降る日だったか・・・あい変わらず、食べた後に集金に行って・・・なにを思ったか
私〜「食べた人が帰って来るまで、ここで待たしてもらいます」…(心臓ドキドキ!足はガクガク)
やくざ事務所の玄関横にペタンと座ってしまったんです・・・・・・もう外は薄暗く、道あるく人がジロジロと、
この続きは・・・・・・また次の日・・・
その3 その頃の私の仕事は、自転車で中央の街を配達!片手にハンドル、片手に出前箱!毎日、毎日・・・ 朝の仕込みが終わると、立ったまま食事を済ませ、さあ!出前の始まりです・・・ 一軒の配達が終わり店に帰ると次の配達が出来上がり!ほとんど店の中にいることがなく、 雨の日も風の日も出前箱を持って、「毎度、一平でーす」と、夜中の一時まで、ほとんど配達でした・・・ そんなある日、レジの横に50枚ほど伝票が重ねてあるのを見て、レジのお姉さんに・・・ 「この伝票は何ですか」と、尋ねた
すると私に 「ああ、これね、そろそろ行ってもらおう、って思っていたんだけど、ツケなんだけど集金に行ってきて!」
今までに集金なんて行ったことのない18才!とりあえず場所を聞いて行く事に。 当時、尼崎は高度成長の煽りで、日雇いニンプをかかえて、仕事を与え、そのマージンを頂くという
何々系何々組っていうのが沢山あって、組争いが毎日のようにありました、 駅前で刺されたとか、商店街で撃たれたとか、毎日のように救急車が飛び回ってました、本当に今思えば信じられませんよね・・・
そうそう、ヤクザ屋さんだったんです、集金のツケの場所が・・・正直!そのまま帰りたかった!
「まいどーい・い一平でえーす」・・・すると奥の方から刺青をした兄さん達が四人ほど出てきて 当時は東映のやくざ映画の全盛期・・・映画のワン・シーンを観てるような、そんな人達が・・・ (この話しー今夜はここまで・・・眠たい)
その2 ひと月たった頃の日々の生活は、 朝、七時起き!眩しすぎて半分しか開かない目を擦りながら、コック服を着て、白い長靴はいて 店に向かって、眠りながら、ふらふらと・・・ 店に入るなり、チーフが来る前に200枚ぐらいの皿をいっきに洗ってしまい、お湯を沸かし お茶を用意します、きっちり八時になるとチーフがやってきます、 「おはようございます!」一礼・・・そして、お茶を・・・ そんな、こんなの毎日がつづいて、三ヶ月ほどたった、あの日・・・忘れる事の出来ない出来事が・・・
2003年04月21日(月) |
隠し味の・・・始まり、始まり・・・ |
阪神尼崎の商店街の近くに、その店・・・グリル一平があった。
初めて覗いた店の中は、細長く伸びたカウンターに二人がけのテーブルが三つ。 そして、カウンターの中に三・四人のコックさん、ウラの方にも何人かいて・・・ その奥に背の高いオーナーが立っていた。天然パーマで堀の深い顔していてチョッとギリシア人に似ていて・・・。
私に「ラグビーやっていたんだってなー」「おれも、高校でやっていた」と、ぶっきらぼうな会話。 それなりに挨拶を終え・・・寮へ向かいました。とある一軒家の二階で、あまり陽のあたらなそうな部屋で、ハンモックが二つほどぶら下がってて、六畳二間に十人ほどで寝るらしい・・・。
「凄い」と、独り言・・・。
ここで私と、そして、コックさんのお話しの始まり!始まり!です・・・。
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