一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
目 次|過 去|未 来
その12
三人に後で聞いた話しだけど、出前の自転車が事務所の前に止まってるし、その二階で、怒鳴る大きな声がした時、たまたま事務所にいた、オルテガが三人に・・・「見てこい!」 だったそうだ、
剃り込み!四本指!刺青!三人とも、凄い顔して・・・
「偉そうに言うとんのわ!お前か!」・・・・・・・(君達も結構、偉そうなんだけど)
床を吹いてる私を見下ろすように椅子に座って、怒りあらわなマスターを・・・ 三人が取り囲むように、見下ろし、三人で、そっと椅子ごと抱えて、らせん階段の上から・・・ 下へ向けて!落としたんです!・・・「あああードンガラガッタン!ドンガラガッタン!」 ちょうど、カーブの所で椅子がひっかかって、本人も椅子の下敷きになり、ゥウウゥゥゥ・・・ 三人が、見下ろして、マスターに言ったセリフに・・・シビレタネ・・・
「男はな!弱いものイジメは!せーへんもんや!」・・・・・・・・・・(オルテガや・・・)
マージャン屋のマスターが私に・・・「あの人は、負けが込むと廻りに八つ当たりするからみんなに 嫌われたしなー心配せんでええで!」・・・・・「ああーはい!」
こんな事も・・・ありましたよ・・・
その11
そう言えば、こんな事もありましたよ・・・
オルテガの事務所の前がマージャン屋になってて、入って直ぐに横がラセン階段で上に上がると、 20個ほどの、マージャン卓があって、いつも出前を取ってくれる人は決まってて、近くで何かスナック をしてるらしく、みんなからは、マスターって呼ばれていて・・・
たまたまその日、負けが混んでて虫の居所が悪かったのか、私が台の上にスパゲティーを出して、御代を頂いて帰ろうっとしたら・・・
「マテぇー!なんやこれ!・・・何や言うとんねん!」
「え?スパゲティーで・す・け・ど・・・」
「アホか!見たら分かるわい!この、かげた皿のことを言うとんのじゃ!」・・・・
「刑務所じゃあるまいし!こんな皿で食えるか!!」と、
皿ごと床にほり投げた!・・・「持って帰れ!」・・・大きな声で怒鳴った!
私は、怒りをおさえて、片付けていると・・・直ぐ横のラセン階段から、ドカドカ!ドカドカ!と何人か 上がって来る音が・・・もしかして・・・事務所の前だし聞こえたかな?・・・やっぱり!あの三人や!・・・ 来た!来た!凄い顔や!しらんでー
また・・・・次
その10
オルテガのお誘いも、丁重にお断りして、寮に帰ろうとしたら、オルテガの言いつけで、剃り込みと、 四本指が寮まで送ってくれた・・・当時、東映のヤクザ映画の全盛期、映画の煽りを受けてか・・・ 「兄貴!」・・・・・・・(年もそんなに変わらへんやん!)
「人目もあるから、その呼び名はやめてくれる!まだまだ僕も君らといっしょで、修業の身やから・・・」
「すんまへん!じゃー兄さんって事で、」
「ダメ!名前を呼んで!佐藤君って」
「ええ!それは、チョッとヤクザの世界では・・・」
「いや!僕はヤクザじゃないし!」・・・・・「自分らはどうしてこの世界に入ったん?」
剃り込み〜「尼の県立高校出て会社に入ったけど、上司とけんかして・・・家でブラブラしてる時に、 映画で(高倉 健)を観て、これや!って」
四本指〜「三田の大きな農家の長男で、朝、早いのがイヤで家出して、尼で(高倉 健)の映画を観て、 この人の世界へと思った」と・・・
この二人の話を聞いて、当時十八歳の私は、あまりにも私の貧乏な田舎の話しはしたくないと思った、そして・・・若かったのでしょ!この二人には絶対!負けたくないって、思ったものでした・・・
次は・・・また今度・・・
その9 その頃の、ビリヤードは、どこの店も深夜、三時ゴロまでやってて、私たちのように、仕事を終えて、やって来る連中も多く、何故かここは、いつも一杯で不思議な店でした・・・ ある日、いつものように来ると、従業員の人に一時間待ち!と告げられ、座ってると店のマネージャーが来て・・・
「あ!あの、社長に聞いてます!直ぐにはいれます!」・・・ (ここの社長って、だれ?)
しばらくして、私たちが、ワイワイやってると、マネジャーが側に来て!
「あのー奥の台で社長が呼んでます!」・・・・・・・・ (えええ!・・・誰?・・・)
マネジャーの後を付いて奥の部屋に・・・薄暗い部屋の中にビリヤードの台、その奥に、一人 その人はいた・・・・・・オ・ル・テ・ガ! オルテガは窮屈そうな三つ揃えのスーツを、アル・カポネのように着こなし、私に・・・
「!教えたろ!最初が肝心や!」・・・・・キューの先にチョークを付けらがら・・・
「あ! は、は、ハイ!」・・・・・・・・ (なんで?僕やの?わからん)
「四つ球!言うてな、これが本当のビリヤードなんやで!」…・(赤が二つ、白が二つのゲームらしい!)
先輩達が・・・遠巻きに・・・「もうーぼくら先に・・・帰っとくわな!」・・・・・・・ (見殺しかい!)
オルテガが私を・・・じーっと見据えて、キューを立てながら・・・
「わしの・・・・組に・・・入らへんか!・・・」・・・・・・・・・・・ (はあー?)
その8 当時、阪神尼崎の中央商店街は、飲み屋にパチンコ、マージャン屋、ビリヤード、などがやたら多く、 必然的にその道のプロが生まれてきます・・・配達に行くとその道のプロの方たちが私に・・・
「にいちゃん、かいな?この間、事務所で暴れたらしいな!」・・・・・・(何で!暴れなあかんねん)
「事務所の前で座り込みしたっちゅーやん」 ・・・・・・ (それは、した!)
「事務所の中で若い衆を木刀で叩いたらしな!」・・・・・(もう!とっくに、・・・死んどるは!!)
ある事ない事、いろんな噂が飛び交って、いちいち説明しながら配達をしてましたよ。 月一度の休みに先輩達の何人かとビリヤードに行ったとき・・・いっぱいで一時間ほど待ち時間が・・・ その時、奥の方で常連さんみたいな賑やかなグループがいて、目と目が合った時、正直イヤな予感!
「わしら!もう終わるんで、ここでどうぞ!」 ・・・・ (剃り込みや!刺青や!)
「仕事やすみですか?」 ・・・・ (声かけんといて、ほしい)
一番びっくりしたのは、先輩達!「あの人達は友達なんかい?」 ・・・・・
その7
その頃、店では、私が出前に行ったっきり、日が暮れても帰って来ないので、何人かの先輩達が心配して事務所まで見に来て、すると・・・私が事務所の前で、ちょこんと、座ってるので・・・
「あ・あ・アイツは、あんなトコで何をしてるんや!」と、びっくり!、そんなこんなで、店の中の みんなも、そわそわドキドキ・・・警察に言った方がいいんじゃないかと、大変だったそうです
そうこう、みんなで思案してる時に、私が「剃り込み」・「刺青」・「四本指」・、三人といっしょに帰って来たので・・・ウエイトレスのお姉さん達が・・・「あ・あ・帰ってきましたー」 ・・・・(帰らいでか!)
もうー顔なじみになった!三人組がみんなにお詫びをしてる時に・・・みんなは・・・「はい!いえいえ、」 チーフが胸はって・・「は・は・払ってくれたら、ええけどね!」「今度はちゃんと払ってや!」と、得意気に 言ってました、そして、三人が帰ったあと、みんなが・・・「えええーいったい、何があったん?」
「ハイ!ツケの46500円!」と、レジの人に渡すと、不思議な顔して
「へえーあの三人からよく取れたね!」・・・私が・・・
「あの人たちじゃなくて、オルテガ!じゃなくて、くれたのは親分です!」すると、みんなが・・・えええ!・・・えええ!
ちかれた・・・・・つづき
その6
私を見つけて立ち止まり、剃り込みにオルテガが・・・ 「この子は何んや!・・・おまえら何してるんや」
四本指の子分が・・・ 「すんまへん!メシ代もらうまで帰らん言うて座っとるんですわ!・・・もう、帰しまっさかいに!」
すると、オルテガ、が、詰め寄る子分達を止めながら、私を、じーっとみて・・・ 「メシ代は幾らや、まあ!そんな所に座らんと、中に入れ!」・・(えええ!中に入った所を刺される)
オルテガ、が、事務所の中から・・・・ 「ぼく?なーにも心配せんでもええ!はよ!ここへ来て座り!」・・・(やさしく言って刺すんやろ)
私は出前箱かかえるように持って、事務所の中へ・・・そして皮の大きなソファーに座り・・・ オルテガが内ポケットから蛇皮の大きな財布を出しながら私に・・・「なんぼや」・・・、
「あのー今までの分のツケが・・・46500円なんですけど」・・・・ (あああ言うてもた)
まわりの、血ノケの多い子分達が、やばい!と、思ったのか、いっ声に私に向かって・・・ 「何ぬかしとんねん!・・・お・お・親分!このガキ、嘘ついてまっせ!」・・・(いっしょにすな)
オルテガの目の色が変わった・・・私は正直やばい!と、思った!瞬間! 壁に飾ってあった、五本ほどの木刀を一本!取るやいなや、振り向きざまに、 刺青と・剃り込みと・四本指に、横から肩に向かって木刀を振り下ろした 私の耳には、今でもあの時の「ぶうーん」と、いう音がはっきりと残っている、さらに ・・・オルテガが振り下ろしながら一人一人に・・・
「弱い者をいじめるようなヤクザだけにはなるな!と、言うてるやろ!」 ・・・・(親分はすごい!)
つづきは・・・・・・また
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