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2025年05月16日(金) 女子高生のスカート丈についての一考察

学校から帰ってきた高校生の娘を見て……あれ?
「朝行く時とスカートの長さが違う気がするんだけど」
「気のせいじゃない?」
ととぼけていたが、ブレザーを脱いだらやっぱりスカートを腰のところで折り曲げていた。私服だったら膝が丸見えでもなんとも思わないけれど、制服だとちょっと短いかな。
先生に注意されない?と訊いたら、「学校では短くしてないもん」。
放課後に友だちと寄り道する日に駅のトイレでふた折りほどするらしい。彼女にとって足が長く見えてブレザーとのバランスがベストな丈が膝上十センチなんだそうだ。

「制服は着崩さないで着るのが一番。きちんとした子に見えて断然好印象。学校はオシャレして行くところじゃないからね」
と一応型通りのことを言いながら、自分の高校時代を思い返す。
当時は長いのがカッコイイとされ、足首と膝の中間くらいが主流だった。校則は「膝が隠れる程度の長さ」だったが、中学の時のように膝立ちしてすそが床につくか確かめられるなんてことはないから、オシャレな子ほど長くしていた。
そして、それよりさらに長いくるぶし丈を履いていたのがちょっとコワイ人たち。
体育の授業で学校の外を走っていると近所の高校の生徒が公園でタバコを吸っているのを見かけたが、彼女たちのスカートはつま先しか見えないような超ロング。不良少年・不良少女を主人公にしたドラマや漫画が大流行していたから、「これが本物……」とどきどきしたっけ。

それから時は流れ、女子高生と言えばミニスカートという時代になった。
ちょうど私が高校生の時に放送されていたドラマ「スケバン刑事」の三代目麻宮サキのスカートは足首丈だが、

1988年

十八年ぶりに復活した四代目はこうだ。
2006年

太ももあらわに街を闊歩する女子高生を見かけるたび、「ああ、私は八十年代の高校生でよかった」と胸をなで下ろしたものだ。部活で鍛えた立派なふくらはぎで、こんなのはとても履けない……。
いやしかし、あの頃の女の子は私に限らずみな頑丈そうな足をしていたような。「スケバン刑事」をYouTubeで確認してみたら、初代(斉藤由貴さん)も二代目(南野陽子さん)も三代目(浅香唯さん)もアクションの最中にスカートからのぞく足ははっきり言って太い。いまのアイドルではありえない足首をしている。

この何十年かで女の子の足は本当に変わったと思う。丈の短いスカートが流行りはじめた頃からどんどん細く長くなっていった。
九十年代後半、ルーズソックスを履いた女子高生は一様に棒のような足をしていた。昔だってすらっとした足の持ち主はいたけれど、上から下まで同じ太さのこんな足ではない。
「なるほど、こういう足だからこの丈のスカートが似合うのね」
私はラマルクの進化論を思い浮かべる。もともとキリンの首は短かったが、高いところにある木の葉を食べようと背伸びをしているうちに徐々に首が長くなっていまの長さになった、というあれ。
日本人はまぶたの脂肪が厚いためひと重まぶたの人が多かったが、戦後ふた重まぶたが増えたという話を聞いたことがある。「ぱっちりした大きな目」が美の基準になり、女性はアイプチなどで一生懸命そういう目になろうとした。その子どもも年頃になるとやっぱりふた重に憧れ、あれやこれやする。そうしているうちに「ふた重」という形質が日本人に定着したのだ、と。
女子高生の足も「こうなりたい」と望む方向に進化した例かもしれない。長いスカートを履いていたらダサいと思われる、モテない。それでダイエットをしたり引き締め体操をしたりしてそれが履ける足、似合う足を作り上げていったのではないか。
かつて「胴長・短足・大根足」が典型的な日本人体型とされていたことを、若い人は知っているだろうか。



この話を職場でしたところ、「逆に私は『いまの子はスカート長いなー』って思ってました」と同僚。
アラフォーの彼女の高校時代はミニスカート全盛期で、膝上十五センチ以上を履いていたという。当時の写真を見た娘に、「よくこんな頭悪そうな恰好してたね」と絶句されたことがあるそうだ。

言われてみれば、毎朝駅で見かける女子高生は圧倒的に膝丈が多い。太もも丸出しの子なんてどこにもいない。いつのまにか「JK=ミニスカ」ではなくなっていたんだ。
女子高生がオシャレと感じるスカート丈は時代でこんなに変わるんだなあ。

【あとがき】
制服は指定された通りに着るのが清楚で知的に見えて一番いい。とはいえ、スカートが膝下丈だと野暮ったいと言えば野暮ったい。膝が見えるくらいが軽やかで可愛いと思うなあ、若いんだもの。