ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2002年09月10日(火) ある夜の居酒屋日記

やっぱ思った通り・・アレだったから・・休暇願い出そうと思っていたのだ。(笑)
でも晩酌ハッポーしてたら、いきなり元気が出て来てしまったのだ。

今夜は秋刀魚を焼いたのさ。脂がのってて美味しかったよ〜
でもね・・大根おろしてる間に焦げちまったのさ・・。

「お願い・・誰か秋刀魚見てて・・」と台所で泣き崩れていたのに、誰も助けてくれないのだ。
うちの男なんて大嫌いだ!私を居酒屋の女将だと思っているに違いないのだ!

「あんね・・そんなこと言ってたら一人で店なんか出来ないぜ!」なんて言うのだ・・。
「あっ!女将!ビールもう一本ね!」そんなこと言って感嘆符が多すぎるよ・・君たち。

女将は泣きながら大根をおろす。
焦げた秋刀魚をお皿に並べ、絶望と嘆きのはざ間で心がはちきれそうになる。

そして女将はじゃがいもを薄くスライスした。ジャーマンポテトが食べたかったのだ。
心はすでにバターの香り。甘く溶ける玉ねぎの気持ち。嘆きの果てに見える希望の光。

しかし、「女将・・もうそれいいよ!キャンセル!」若い方の男が偉そうに言うのだ。
「そ、そんなこと言わないで・・すぐ出来ますから待って下さい・・」
女将は目に涙をいっぱい溜めて懇願するのであるが、その若い男は・・完全無視したのである。
女将のこころは深く傷つき・・手元のハッポーをぐいと飲み干し、
我が身の不甲斐なさを噛み締めるのであった。

そ、その時である。突然年老いた男の携帯がテーブルの隅でブルブルと震え出した。
「あっ・・これお客さんの携帯ですね?」女将はすばやくそれを手にする。

まりまりまりまりまり・・その携帯のディスプレイに「まり」が居た!!!

ああ・・多分次に行く店の女ね・・女将は寛大に微笑むのであるが、
男は異常に慌てふためいているのだ。
そして奪い取るようにそれを握り締めるやいなや、店を飛び出し表に走ってしまったのだ。

「おやっさんもやりますなあ・・・」若い男が不気味に含み笑いをする。
「あらま・・意外とモテるんですね〜あの方・・」女将は興味津々で聞き耳を立てる。

ゆっくりお話しすれば良いのに、男はすぐに電話を切ると気まずそうに帰って来た。
そして訊きもしないのにあ〜だらこ〜だら「まり」について語るのである。

「まり」は最近日本に来たばかりで、まだ日本語がよく話せないそうである。
とても人懐っこくて可愛い女の娘だそうだ。

「きっと家族と離れて寂しいのよ・・お友達になってあげなさいよ!」
女将は真面目にそう告げるのであるが、男はかぶりを振りながらふと・・目を逸らすのである。


焦げた秋刀魚も意外と美味であった。女将はいつまでも帰ろうとしない男達のために・・
明日も明後日も心を込めて・・美味しい料理を作りたいなと思っていた。


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