私の部屋の窓からは堤防が見えて。その向こうに大河が流れています。
朝はいつも窓をいっぱいに開けて。堤防の草がそよよと揺れているのを。 心地良く眺めています。真っ青な空ならよけいに嬉しく。深呼吸をいっぱい。 しては。一日がゆっくりと始まっていくのです。
名も知らぬ草だけれど。今とても可愛い綿帽子みたいなそれは花なのか。 ふわふわとしたその草が大好きです。まるで真っ白な猫がたくさん。 堤防を走り抜けているように。その綿毛が風に揺れているのを。 目を細めて見とれてしまったりします。
さぁ・・私も行こう。そして仕事に出掛けます。 その時ながい橋を渡り。向こう岸に着くまでは。川風をいっぱいに浴びて。 しゃきっとしゃきっと少しずつ。もう後戻り出来ない心意気で。元気出して。 「行くべし!」とか呟きながら。アクセル踏んでぶっ飛ばしてしまいます。
仕事を終えるとほんとにほっとします。はぁ・・今日もお疲れさんとか。 自分で言う時もあれば。たまにタイミングよく彼女からメールが来たり。 そんな時はとても嬉しく。やっぱ・・・男に生まれたら良かったなあとか。 真面目に憧れるひと時もあったりするのです。
そうしてまたながい橋を渡り。家路に着くのですが。 帰りはいつも堤防の上の道を通ります。そこでシートベルトを外し。 ふぁ〜っと肩のちからを抜きながら。ゆっくりノロノロ走ります。
すっかり日がながくなったので。今は夕焼けには少し早く。 そのかわり。川面がキラキラと眩しく。レモン色の水が流れています。 大好きな道です。ここが自分の庭のように思うこともあります。
帰宅して。あれこれ忙しく。手の込んだ料理も作ることなく。 男達に餌を与えるようにして。食べ終えたらまたとてもほっとします。
そして陽が沈みそうになると。二階の私の部屋は紅く染まります。 どきどきしながら窓の外を眺めれば。例の綿帽子かそれとも白い猫のシッポか。 それがオレンジ色になって。またゆらゆらと酔ったように揺れているのです。
どきどきがおさまらない時。居ても立ってもいられなくなって。 私はサンダルばきで堤防の石段を駆け上がって行きます。 ビール飲んだばかりだから。はぁはぁぜぇぜぇしている時もあります。
決して終るのではないその紅い陽の。行方など訊くことも出来ずに。 落ちて落ちてそれがとうとう見えなくなってしまうまで。
私は・・何も。ほんとうに何も想うこともせずに。
ただ・・立ち竦んでいる時があります。
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