つかの間ではあったが雷雨の時間帯があった。
午後には雨もやみ静かな夕暮れ時となる。
あちらこちらで彼岸花が満開となり鮮やかな紅に目を奪われる。
幼い頃には怖ろしいと思っていた花も
今では愛でることが出来るようになった。
それがきっと「おとな」になると云うことなのだろう。
けれども未だに触れたことはない。触れてはいけない気がするのだった。
上手く言葉にできないけれど何かが私を拒絶している。
それはいったい何なのだろうか。知れば哀しくなってしまいそうだ。

母の施設から何の音沙汰もなし。容態が落ち着いているのだろうか。
こちらから電話をして確かめることも考えたけれど
昨日の看護師さんの苛立った様子が気になり躊躇してしまった。
多忙な折に家族からの電話は迷惑に違いないと思ったのだ。
きっと最善を尽くしてくれていることだろう。
「お任せします」と言った以上は黙って待つしかないのだと思う。
そのうちきっと連絡があるだろう。「もう大丈夫ですよ」と。
やきもきしているのはどうやら私だけのようで
誰も母のことを話題にしない。
それだけ母は孤独であったのかと今更ながらに思う。
家族を捨てた昔のことを今更責める気持ちはないけれど
「自業自得」だと云われればそれも納得せざるに得ないのだ。
母は今どんな気持ちでベットに横たわっているのだろう。
決して過去を悔やんではいないような気がする。
それは母の人生に他ならず母の決めたことなのだったのだから。
私はずっと薄情な娘であったけれど
ほんの少しだけ遠い昔の家族であったような気がしている。
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