朝の冷え込みは緩んでいたが強い北風が吹き荒れていた。
山間部の江川崎では初雪が降ったそうだ。
山里も山間部ではあるが時雨が降ったり止んだりだった。
もう少し気温が低ければ雪になっていたことだろう。
大掃除をしようと意気込んでいたが寒さに挫けてしまう。
片付けをするのが精一杯で窓を拭くことも出来なかった。
そのまま事務所の玄関にしめ飾りをしてしまう。
同僚は午前中通院だったので義父と二人で事務所を片付けていた。
義父の机の上はあらゆる書類が散乱しており大変な有り様である。
ふと思いつきホームセンターで引き出し型の書類入れを買って来た。
一枚一枚手に取り確かめながらの作業である。
不要な書類がかなりあり捨てたが保存しなければいけない物も多い。
ついには引き出しが足らなくなり後は年明けにすることになった。
午後には同僚が出勤して来てくれ工場の片付けをしてくれる。
ずっと忙しかったから掃除どころではなかったのだ。
整理整頓は重要なことだが何と散らかっていたことだろう。
それも同僚一人では手に負えず義父が大晦日までにしてくれるそうだ。
鏡餅は毎年届けてくれるお客さんがいるのだが今日は来なかった。
明日だろうか明後日だろうか必ず持って来てくれるそうだ。
来年の干支の巳の置物を飾り千両を活けようと庭に出たが
どうしたことか今年は全く実を付けていない。南天も同じくである。
やまももの木を伐ったので環境が変わったせいかもしれないが
夏の猛暑で一気に弱ってしまったのかもしれない。
ふと辺りを見渡すと山茶花がほぼ満開になっていた。
母が育てていた山茶花で母の口紅の色をしている。
「一輪だけ頂戴ね」と声を掛けて手折った。
千両や南天のように縁起物ではないかもしれないが事務所に彩を添える。
母もきっと喜んでくれることだろう。
帰宅する前に母の仏前にお線香をと思いつつもう動けなかった。
義父が「俺がちゃんとするけん」と言ってくれて助かる。
いつまで経っても薄情な娘であるが母はきっと許してくれるだろう。
この年末の窮状をどれ程の思いで見守ってくれたことか。
何とか乗り越えられたのも母のおかげだと思っている。
そうでなければ奇跡は在り得なかったのではないだろうか。
3時に退社。義父と同僚にこの一年の労をねぎらい帰路に就く。
大掃除は決して完璧ではなかったが何とも心地よい達成感がある。
やれるだけのことをやったのだと思う。精を尽くした一年であった。
仕事始めは来年の6日だが一輪の山茶花が待ってくれることだろう。
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