身の程知らず
昨夜遅く君が来た。
久しぶりに会った。

 少し痩せた?

 体重は変わってないよ。


親の不機嫌の理由に気づいた。
私たちの部屋だと思っているんだろう。
違うよ。
私だけが暮らす、私の部屋だ。

君が持ってきた洗濯物を洗濯した。
乾かす暇もなく、君は東京に戻った。

君は会社の一角に折畳式ベッドを置き
銭湯に通い、食パンを齧って、毎日を送っている。

私だけのための部屋を探し、仕事をし
私を生かすために奔走している。

親は知らない。
だから不機嫌になったんだろう。
二人で暮らす部屋のために、何故自分がと。

いくつか部屋を内見して

 あの部屋は、ように合わない。

そう言って、次を探してくれた。

自分は会社の一角に寝泊りする。
懸命に働いて、私を生かそうとする。

 ようが言った条件の部屋が必ずあるから
 だから来て

私のために何軒の物件を見てくれただろう。 
あのとき、私が言ったことを覚えているから。

惨めな暮らしはしたくない。
爪に火をともすように暮らして
たった数年、生き長らえる値打ちなんてない。

私には守るべき子供はいないから。
誰かのために生きなければならないわけじゃないから。
何も欲しいものはないし、したいこともない。
だから、こんなふうに思ってしまうんだろう。

例えば、千万単位の毛皮や、億単位の宝石を見た後で
数十万の毛皮や、数万円のアクセサリーはいらない。
いっそ、何も持たないほうがまし。

私はきっと贅沢で身の程知らず。

2004年12月12日(日)

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