再会
ように逢えたから もう、他はどうでもいい
二度と見ることはないと思っていた場所で、彼は言った。
15Fのガラス越しに、夜景を眺めながら、彼は涙ぐんだ。
私は彼の真剣さを茶化し続けた。
「おねぇちゃんたち」は、どうするの?
好きでもなんでもない女は、いらない。
ようにまた逢えるとわかってから、一切連絡していない。
ように逢ったから、他の女は必要なくなった。
今度いつ逢えるかわからないのに?
我慢できなかったんじゃないの?
もういい。
ようだけでいい。
これからもなかなか逢えなくても、電話も毎日しないし
メールも控えるけど、それでもいい。
1年ぶりに見た彼は、20代の半ばに見えた。
だけど頑な表情は和み、優しい笑顔を浮かべるようになった。
外を眺めながら、手摺にもたれ、たくさんの話をした。
観覧車に乗り、車で走り、食事し、ライトアップされた公園を歩いた。
私はここでは暮らせない。
あの当時の惨めで辛かったイメージが吹っ切れない。
ここにいたときに、もっとかまってあげたらよかった。
1年ぶりに逢った彼は、当然のように私の旅行バッグを持ち
手を繋ぎ、いろんなところに連れて行ってくれた。
私ね、楽しむことにした。
何も買わずに節約して、引っ越すごとに、桁違いの出費があった。
4年間で5回は、きつかったよ。
逢うことを楽しみに、生きていてほしいと言われて嬉しかった。
だから楽しみにして、毎日、過ごした。
逢えて嬉しい、本当に嬉しい。
今すごく幸せ。
元日からの4日間は、この数年しなかったことをした。
終電を気にせず、深夜まで呑み、タクシーに乗るときは
高速を使って移動した。
毎日出歩き、友達に会い、食事をし、買い物して
着て行ったコートは、あっさりと捨ててきた。
少し前に知り合った人は ようと同じ歳だった。
でも全然違う、ようとは全然違う、全く好きにならなかった。
そばに寄るのもイヤだし、触れたくなかった。
私、逢えて嬉しいよ。
逢うことを楽しみに過ごしたよ。
どうして逢う気になったの?
もう逢わないって決めてたのにね。
きっとあの地震があったから。
今日で最後のつもりなの?
まだ月明かりを見てないよ。
日が暮れるのを待ち、二人で夜空を見上げ、月を探した。
月はどこにも出ておらず、厚い雲があちこちにあった。
次は俺が逢いに行く。
そして、いつか、月明かりを見に連れて行くから。
2005年01月05日(水)
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