BERSERK−スケリグ島まで何マイル?-
真面目な文から馬鹿げたモノまでごっちゃになって置いてあります。すみません(--;) 。

2004年09月30日(木) emma様江:円環の乾き_前

 狂戦士の甲冑の痛手から、ガッツがようやく立ち上がれる様になった頃の事。
 小さな魔女シールケの力もあってか、一行は森の中にあって使途と呼ばれる化け物の追撃にあう事もなく、ひっそりと傷を癒していた。
 ひっそりと‥この表現が似つかわしくない程、ガッツの受けた傷は凄まじく、流れる血がやっと止まるまで彼は昼夜にわたって苦しみ続けたのだ。

「はい、キャスカさん、あ〜んして」

「お〜♪」

「熱いですから、気を付けて食べましょうね」

 昼食の時間、キャスカの世話をするファルネーゼの手際も堂に入ったものだ。パンをちぎっては与え、スープを冷まして口元に運んでやる。キャスカはファルネーゼの細やかな優しさに、すっかり心を許している様だ。まるで餌をもらう雛鳥の様に無邪気に喜んでいた。
 先に食事を済ませたセルピコは、内心複雑、いや驚きをもってその様を何とはなしに見ていた。手元では、旅で疲れた衣服の繕いをしながら。
 そしてその様を見つめるもう一つの目があった。ガッツだ。やっと外に出られたガッツは、キャスカとファルネーゼの二人から必ず離れた場所に座る。ガッツが近づくと、キャスカは彼に怯えて食事どころではなくなるのだ。

「‥‥‥」

 晴れた落葉樹の森の中、陽の光をあびてガッツはキャスカを見つめている。一つしか残されていない、その瞳には深い哀しみの色があった。
 確か、断罪の塔の時、あの娘はガッツに対して、ああまで恐怖感を持っていなかった筈だ。しばらく会わないうちに、何かあったのだろう。そうは思うがセルピコは、ガッツにその理由を聞いたりなどしない。もとより他人の詮索はしないセルピコだが、物狂いの娘と、その者をひたすら守る黒い剣士という組み合わせは、自分とファルネーゼ程に因縁があるのだろうと思うだけだ。
 夜の魑魅魍魎を、また使途と称する化け物を切り伏せる黒い剣士の姿からは、想像出来ぬ情感をたたえて、悲しげにキャスカを見守るガッツの姿。人目につかぬ道を選び、妖精の島へ旅をするという旅。余人には計りかねる、烙印の者達の道行きは言葉に出来ぬ何ものかを感じさせた。

続く


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