泡沫の記
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村野さんと二人だけで話す。 平成元年に起きた出来事を村野さんに話してしまう。 とりとめもない話しもしたけれど、間もなく異動の彼とは もう二度と会うこともないでしょう。 偶然のいたずらで、17年ぶりに村野さんと会えた偶然は ちょっと切ないけど、よかったと思う。 生きていればこそ、こんな偶然も起こるのだろう。 村野さんは相変わらず魅力的な人だった。 私の記憶の中で彼はいつまでも素敵な人で居続けるのだろう。 そういう記憶は、いいのだけどちょっとだけ寂しい。
夕方、口腔外科にて手術。 右のこめかみの下あたりに麻酔をしたが、強烈に痛い。 麻酔が効いてから手術が行われたが、耳の後方でぐにゅぐにゅと 音がして、えも言われぬ気持ち悪さと辛さがある。 麻酔が効いている間は顔の右半分が動かない。 少し休みたかったけれど、時間も遅いし帰途につく。
帰り道、携帯が鳴った。 Yさんからの電話だったが、相変わらず自分のペースでしか 話してくれない。 術後、間もないこともあり憂鬱だった私はつい 言っても仕方のないことを言い、Yさんを怒らせた。 二人の温度差は決定的である。 あとは、私が我慢するかどうかだけ。 自分のことだけで精一杯のYさんを、こんなに面倒みている 自分が阿呆らしく思えてきた。 彼はこれで今後は私に頼りにくくなるだろう。
せっかく買って取り置きしておいたオーブンレンジもまだ 受け取りにいってくれていなかった。 それをすまないとも思っていないようで、それが何よりこたえた。
私の押しつけがましい愛情など、自己満足でしかない。 愛すればこそ、少しでも力になりたいなどと馬鹿なことを 考えるから、あとでこんなに虚しくなるのだと、 私は今までの経験で十分にわかっているはずなのに。
「俺にも家庭があり、お前にも家庭があるだろう」と言われた時は まるで、不倫みたいだと思っておかしくなったけど 私は何も言わなかった。 彼のスタンスが、今も以前も変わっていないことを 端的に表した言葉だった。
彼は私には切なすぎる素敵な人だけれど、恋愛をしようとする エネルギーはない人なのだ。 彼をどんなに思っていても、私はいつも物足りない寂しい気持ちで いなければならないのだろう。 約束しろとは言わないが、彼は私がどうしても必要なわけじゃない。
そんなわかりきったことを、自分のなかでもう一度確認することとなった。
麻酔がだいぶ切れてきた。 気持ちがとても良くない。
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