僕と君と世界の距離を

2006年10月15日(日) 舞台「遭難、」

『遭難、』 劇団、本谷有希子


ネタばれ含みます。
これから観る人でネタばれ駄目な人はみないよう
気をつけてください。



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最後の演出で鳥肌がバババババーと出てきました。

照明バン!風の音バン!照明落ちバン!音楽バン!

ああ、気持ち良い…(伝わる気がまったくしない)
鳥肌に関しては話が良い悪いとかは問題ではなく、
単純な快不快原則の気持ちよさ。

複雑な演出だから特出するわけではないのです。
単純だからこそ誰もが「気持ちいい」と思えるのです。

あと私が舞台という媒体で一番重要に考えるのが照明で
照明の使い方がうまいとそれだけで舞台がよくなる。

ように感じる。
単なる個人的な思い入れです。


芝居の内容も良かったです。

思い当たる自意識と、
「自覚しないで生きていける」人に対する嫌悪感と
「自覚してしまっているから生きづらい」、
でもそれをどう解消して生きていけばいいのかわからない。

人の愚かさがごちゃごちゃと、しかし芝居自体は整然と。
全体的に笑いに満ちてて、でもそれがかえってひどい。
笑えるから余計にひどい。

イヤな人間ばかりが出てくるのに芝居を見終わった後に
イヤな気持ちばかりにならず、
かといって本当は救いなんてどこにもなく。
(イヤな気持ちにならない、
ということが本当はひどいことの気がする)
(みせもの的には正しい)



主人公は、
人の中で『遭難』したまま終わっていく。

主人公が「自分大好き、自分がかわいい」という度、
「あなた自分だけがかわいいじゃない」と、
「あなた自分が大好きじゃない」と、
誰かに彼女が言われる度、

彼女は自分が大好きな自分が嫌いで、
「大好きな自分が嫌いな自分」を
認めれなくて、認めれないから否定して、
そうやって生きているんだなあと思いました。


「自分大好き」と
「そんな自分が嫌いで仕方ない」は
どちらも本当のことで
それは矛盾しているようで全然矛盾していない。

よくあることです。

よくあることですが、それをうまく描くのは難しい。
よくできた芝居を作るなあと感心したし
チッ、とも思いました。笑。

あと、含みのある場面の
「そちらの想像にお任せします」の部分も、
変にやらしい感じもなくつるっと流れていって良かった。

個人的な好みだと思いますがこの「お任せ」感が
私はあまり好きではなく、
それは白黒はっきりつかないことがあることなんて
日常茶飯事だしよくあることなんだから
表現媒体である以上は他人に見せれるレベルまで
「はっきりつかない」ことをもっていけばいいのに、
という気持ちがあるからなんですが、

まあ単純に気持ち悪いつうのもあるし、
手抜きにもみえるものもあるので。

ラクしてる「お任せ」は
シェフの気まぐれランチくらい胡散臭いつう話し。
シェフ、誰よ!みたいな。


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