限定鼓動

2011年04月10日(日)

薬漬けの内臓が、いよいよ異常数値を示す。

部屋中に響く、呼吸器の音が煩い。

隣には誰もいなくて
それを理解した上で、幻覚を視る。

気道に通されたチューブの所為で話せない。

酸素を送られてるのに、息が苦しい。

機械的な呼吸に合わせられない。



+ + +



横紋筋融解症、膵炎、強度の貧血
いった薬が悪かった。
意識は戻らないかも知れない。
言葉は悪いが、戻っても植物状態だと…。

医師に告げられた旦那は、義母に
大丈夫、死にゃせんよ。明日には眼が覚める。
呼びかけたら、きっと返事もするよ。
翌日、その通りになった自分に義母は必死で呼びかけた。


あぁ、よかった。生きている。
あぁ、何故だろう。また死に損なった。



致死量を計算していた。
オーバーするだけの量を確実に飲み込んだ。
薬を流し込む手は冷たくなっていた。
それは恐怖だったのか。
あの日、確かに、死ぬつもりだった。
今度こそ、死ねると思った。
視界が歪み、フェードアウトする最中
さよなら、と床を見つめながら呟いた。


+ + +



そしてまた
ICUで眼を覚ます。




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陽 [MAIL]