ぶらんこ
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2005年04月13日(水) トゲトゲの木

庭の隅にあったトゲトゲの木を切った。

トゲトゲの木は金柑の木の後ろ側にあった。幹も枝もトゲだらけの木。
名前がわからないので「トゲトゲの木」とわたしが命名した。


トゲトゲの木は、もの凄い勢力で伸びていた。
金柑の木の上に覆いかぶさり、四方八方、枝は不恰好に宙に向かっていた。
時々剪定したのだが、どうしてもトゲに刺さりまくるので、途中で投げ出してしまう。
そうやって、トゲトゲの木は成長したのだろう、と思う。

でも、この春に母が来てから、あの草を切れ切れ、と、口やかましい。
草じゃないよ、木だよ。とわたしが言うと、いや、あれは草だ。と、母は言い張る。
「あんなに太い幹の草はないよ」
「ほったらかしにしてたからあんなになったんだよ、草が。あれじゃ金柑の木が死んでしまうよ、あの花壇の花も」

せめて花が咲いたら名前がわかるかも・・・と思ってそのままにしておきたかったのだけれど、これ以上放っておくと、母自身が動きかねない。
そんなことになったら、トゲトゲの木を切る前に、母の脚が折れてしまう。

と、いうことで、今日は奮起して始めた。
トゲトゲの木を見上げ、「ごめんなさいね。」と言って。

キズだらけになりながら、トゲトゲの木を切った。
切った枝たちは、裏の雑木林へと引っ張って行った。
枝は金柑の木の枝にからみついていたので、何箇所もノコギリを引き、ぶつ切りのようにしてはずし、持っていった。
トゲに刺されながら、10往復くらいした。
両手・両腕・両脚、どこもかしこも切り傷だらけになってしまった。
頭にこそ刺さらなかったが、かぶっていた帽子は何度か枝と一緒に投げられ、慌てて拾った。
「イタタタタ、イター!」 馬鹿みたいに叫びながらの作業だった。

でも、トゲトゲの木は、こんなに沢山のトゲを持ってしても、それも、わたしのような貧弱なヤツに切られてしまった。
自分の身を護るためにつけた鋭いトゲだったろうに。

トゲに刺され血を流し、それでも枝を運んでいたら、なんだか自分の姿が重なってしまった。
わたしもこんなトゲだらけなんだろうなぁ。。。とか思ってしまう。
誰も寄せ付けない人間なんかもなぁ。。。とか。
なのにこーんなに弱いんだね・・・なんて。
なんだか、どっちが切られたのかわからなくなる。
トゲトゲの木の悲しみを感じたのかなぁ。。。。


ところで、直径4cmくらいの幹をまずノコギリでギコギコ切ったのだけれど。
そのとき、いったい何歳だったんだろう・・と思って切り口を見たのだ。
そうすると、驚いたことに、そこには「輪」がなかった。
木の持つ、あの、何年生きてるかわかる、あの輪っか。あれが、ない。
切り口は、真ん中に白く小さな丸があり、そこから放射状に筋がいくつも伸びていた。

草だったんだーーーー、、、、


「やっぱり木じゃなかったよ」
母にそう言うと、母はあっさり、「知っとったよ」と言った。


トゲトゲの木はもうない。
でも、少し前にトゲトゲの木のちっちゃいやつを鉢に植えておいたので、花が咲くのを待っている。
野薔薇かなぁ。。。と、思ったりもするけれど。




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